血圧について
血圧について
血圧とは動脈(心臓から体に血液を送り出す血管)の圧力です。人間は心臓より頭の方が高い位置にあります。重力に反して血液を頭に送り出すために、血圧が一定以上高くなくてはいけません。そのため血圧が低すぎるとふらふらしたりすることがあります。血圧の上の値を収縮期血圧、下の値を拡張期血圧と呼びます。
人間の血圧の正常値は家庭血圧で 115/75mmHg 以下とされています。血圧の上の値(収縮期血圧)が100以上であれば、あまり自覚症状が起きることはないとされています。
血圧の歴史
1896年にイタリアで初めて血圧が測定されたとされています。その後も血圧測定は一部の研究者が行うのみであり、一般の人が血圧を測定することはほとんどありませんでした。
1945年にアメリカ合衆国のルーズベルト大統領が脳出血で倒れ、血圧が300/190mmHgであったとされています。当時は高血圧症の治療などはなく、現在よりもはるかに脳卒中が多かったです。1945年にクリミア半島のヤルタで戦後処理を話し合ったルーズベルト、スターリン、チャーチルは全員脳卒中で命を落としました。
ルーズベルト大統領の脳出血以降、アメリカ合衆国を中心に血圧についての関心が高まりました。アメリカ合衆国は民間保険であり、特に保険会社が被保険者の保険加入の際に血圧を測定するようになりました。血圧への関心が世界中で広まり、現在は日本でも血圧測定が一般的になりました。1950年ころは年10万人の方が脳出血になっていましたが、現在は年4万人前後で推移しています。
高血圧症とは
血圧が上昇する病気を高血圧症と呼んでいます。高血圧症は症状を起こすことはあまりありません。症状が無いにも関わらず病気とされているのは、脳卒中や心臓病を引き起こすからです。
「家庭血圧 135/85mmHg以上」
を高血圧症と呼びます。1回血圧が高いから高血圧症という診断になることは無く、複数回測定した家庭血圧の平均値で診断しています。
血圧が上がる原因
高血圧には様々な要因が関与していますが、中心的な原因は塩分です。実際ブラジルの原住民ヤノマモインディアン、エスキモー、ピグミー族、オーストラリアの原住民達は高血圧症の方は1%以下です。いずれの民族も塩分摂取量が1日0.5-3gと非常に塩分摂取量が少ないです。人類の必要な塩分摂取量は1日0.5-2.5gと言われています。日本を始めとした先進国では、塩分摂取量が1日6-10g程度と言われています。先進国では食料を採取してから実際に食べるまで、一定の時間がかかります。食料の保存のために塩分を使用することとなり、それぞれ食文化を形成しています。平均的な日本人男性は1日10.9gの塩分を摂取しています。
塩分が体に摂取されると、尿を通して塩分を体から排泄する必要があります。塩分を多く体外に排出するために、血圧が上昇し腎臓への血流が増加します。これが高血圧症の始まりとされています。血圧が高い状態が続くと、全身の血管が動脈硬化を起こし更に血圧が上昇します。
血圧の測り方
高血圧症の診断や治療のためには家庭血圧測定が必要です。血圧測定は朝晩の1日2回が理想的です。ただ朝1回でも概ね高血圧症の診断や薬物調整は可能です。朝起きて、トイレに行った後に座って、1分安静にして血圧を測ります。食事や薬の内服を行う前に血圧を測って下さい。晩は夜寝る前に、座った状態で1分安静にして血圧を測ります。毎日が理想的ですが、2日に1回でも血圧は概ね評価が可能です。血圧の測定部位は手首でも問題ありません。
高血圧症で十分な治療を受けていない方がたくさんいる
高血圧はまだまだしっかり治療がされていない方が数多くいらっしゃいます。日本に4000万人の高血圧症の方がいらっしゃるとされていますが、そのうち3000万人は適切な血圧コントロールが行われていません。日本国民の平均血圧をたった1mmHg下げるだけで、日本全体で毎年約4500人の脳卒中による死亡が減少し、約1万人の発症を防ぐことができるとされています。
高血圧症の治療目標
ここ数年は、血圧をしっかり下げることのメリットが世界的に再確認されています。徐々に目標血圧が低下し、現在では
「家庭血圧125/75mmHg」
が多くの方にとっての降圧目標になります。あくまで目標でありそれぞれの人により治療は異なります。
高血圧症の薬について
高血圧症の治療の場合は、薬を使うことがほとんどです。生活習慣は高血圧症の発症に関与しますが、生活習慣の改善のみで高血圧症が治ることは稀です。高血圧症の薬の多くは世界中で数多くの使用実績があります。高血圧症の場合は薬の副作用のデメリットより、降圧によるメリットの方が大きいです。現在高血圧症に対して一般的に使う薬は3種類あります。どれが効くかは人により異なりますが、90%の方は3種類以内の薬物治療で血圧が目標範囲に低下します。
すみだブレインハートクリニックでの高血圧症の治療について
当院は血圧の治療を重視しています。高血圧症を十分治療できないと、将来的な心臓や脳の病気のリスクが上昇するためです。血液検査で体のホルモンの値を測定し、高血圧の原因を推測し薬の選択に活用しています。また現時点で心肥大や腎臓病などを起こしていないか、心電図や尿検査を行っています。減塩に対しては必要に応じて栄養指導を行っています。
それぞれの方に治療目標を設定し、薬の調整を行っています。患者さんには家庭での血圧測定をお願いしています。高血圧症の診療に取り組むことが、将来的な心臓や脳の病気を減らすことができると考えています。