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高血圧症

高血圧症は動脈硬化の要因の1つであり、脳卒中や心疾患の原因となります。生活習慣病の1つに当てはまります。高血圧症とは症状を来すことはあまりありません。高血圧症を治療しても体調は変わらないことがほとんどです。だからこそ高血圧症の病態や治療する意味をしっかり発信しなければいけないと考えています。

 

血圧とは

血圧とは、心臓から体に送られる血管、つまり動脈の圧力のことです。全身に血液を送るためには、血圧が必要です。血圧が0では、心臓より高い頭に血液が送ることができません。

 

高血圧の基準とは

赤ん坊は収縮期血圧が60-90と言われています。体が小さいことや血管が柔らかいために血圧が低くても大きな問題はありません。成人になるにつれて血圧は上昇します。他の動物や世界中の人類を研究した結果、成人の至適収縮期血圧は100-120と言われています。日本を初めとした各国でも収縮期血圧120未満を正常血圧としています。血圧120/80を超えて血圧が高くなると、脳心血管病のリスクが上がるとされています(#1)。120-135は正常高値血圧や高値血圧と呼ばれ、家庭血圧135/85以上を高血圧症と呼んでいます。

家庭血圧で

正常血圧 115/75mmHg以下
正常高値血圧もしくは高値血圧  
高血圧症 135/85mmHg以上

と記載されています。収縮期血圧135もしくは拡張期血圧85のいずれかを超えると高血圧とされます。115と135の間は正常高値血圧もしくは高値血圧という表現が使用されています。

#1 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_hp.pdf

 

血圧が上昇する理由とは

血圧が上昇する理由として、科学的に最も関連があるのは塩分です。他にも様々な因子が関与しているとされていますが、多くの高血圧症の成立には塩分が必須です。主である血圧が上昇する原因について下のページで解説しています。難しい用語がありますが、ぜひ高血圧症で興味がある方はお読み下さい。

塩分が血圧を上昇させるメカニズム

 

塩分摂取について

日本を始めとした先進国では1日塩分摂取量は6-10g程度とされています。WHOでは全世界の人に(高血圧症の有無に関わらず)1日5gの食塩制限を推奨しています。日本では国民1人当たりの1日塩分摂取量は平均9.9g(男性10.8g, 女性9.2g)とされています。日本高血圧学会では、高血圧症の方に対しては1日6gの食塩制限を推奨しています(#2)。現状ではなかなか達成が困難な状態です。

#2 https://www.jpnsh.jp/com_salt.html

日本を始めとした先進国では食塩摂取量が多いです。先進国では食物採集に直接従事している人は少なく、食物を一定時間保存する必要があります。そのために食塩が使われています。歴史的に食塩が過剰な食文化を形成している国がほとんどです。世界的な塩分摂取過剰が、心血管病の一因とされています。

「醤油を一気飲みすると命を落とす」という話を聞いたことがある方も多いと思います。一気飲みで無くても、塩分の過剰摂取が命を危険にさらすことは変わりません。人が一生に摂取できる塩分量には限りがあります。どうか日常生活で、塩分を少しでも気をつけるようにしてください。

当院では高血圧症の方に尿検査で塩分摂取量を計測しています。是非ご活用下さい。

 

高血圧症に薬が必要な理由

高血圧症は基本的に薬剤治療の対象です。理論上は①動脈硬化のプロセスがまだ始まっていない、②塩分を今後厳密に制限(1日3g以下?)できる という2つを満たせば薬は不要です。ただ現状高血圧症と日本で診断される収縮期血圧135以上では既に血管が固くなった動脈硬化が始まっています。また日本で1日3gの厳密な塩分制限は困難(無理な塩分制限は他の栄養素の欠乏を生じ危険なのでやめましょう)という点から、診断後は全例内服加療を行なっています。1日6gを目標とした緩やかな塩分制限をしながら内服加療を行なった方が、効果が高く安全と考えています。高血圧症の薬が有用で副作用が少ない というのも内服加療を行う理由の1つです。高血圧症の薬は安全に血圧を下げるだけではなく、脳卒中や心疾患を防ぎます。

 

健康診断等で血圧高値を指摘された場合

ご自宅に血圧計がある場合は、1週間血圧を計測して手帳やデータで持って来て下さい。ご自宅に血圧計がない場合は当院で24時間血圧を行なって診断しています。またホルモンの異常により、高血圧症を来すことがあります。特に高血圧症の5%を原発性アルドステロン症を占めると言われており、初診時に必ずホルモンの血液検査、腹部エコー検査を施行しています。

家庭血圧135/85を絶対的な基準として、内服加療を開始しています。

 

高血圧症治療の実際

高血圧症治療は生活指導と内服治療で血圧を下げます。目標血圧は多くの場合125/75もしくは135/85です。

矛盾するようですが135/85以上で高血圧症と診断し、125/75以下を目標に降圧することもあります。診断基準と治療目標は異なります。これは他の疾患にも当てはまります。

  家庭血圧

75歳未満

脳血管病(両側頸動脈狭窄や脳の主要動脈閉塞なし)

狭心症/心筋梗塞

慢性腎臓病(尿蛋白陽性)

糖尿病

血液サラサラの薬を内服中

125/75mmHg未満

75歳以上

脳血管病(両側頸動脈狭窄もしくは脳の主要な動脈閉塞)

慢性腎臓病(尿蛋白陰性)

135/85mmHg未満

当院で高血圧の治療を行う際は、必ず目標の血圧をお伝えします。基本的には血圧は家庭血圧を指しますが、何らかの理由で家庭血圧が測れない場合は診察室血圧を参考にします。

高血圧症は臓器障害、主に心臓と腎臓、脳、血管の障害を起こします。それにより選択する薬や血圧の目標が変わります。治療開始時に血液検査や尿検査、心電図、心エコーを行います。また頸動脈エコーで脳に向かう血管を検査することにより動脈硬化を画像化、数値化しています。腹部エコーは高血圧の原因として腹腔内腫瘍を検索するために行なっています。

血液検査や尿検査、心電図は治療開始後半年に1回、その他のエコー検査は年に1回行なっています。

一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話から引用

https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf

 

高血圧症の薬物治療

高血圧症に対しての薬にはいくつか種類があります。特に心臓と腎臓に異常をきたしているか、今後予防する意義がどれくらいあるか、副作用が起きる可能性がどれくらいあるか という観点から薬を選んでいます。主な薬はアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ARNI、カルシウム拮抗薬、サイアザイド系利尿剤になります。ほとんどの方はこのうちの1-2種類を内服することになります。下のページで解説します。

高血圧症の薬物治療

 

最後に

現在,わが国において高血圧の方は約4300万人おられると推定されています。そのなかで,適切に血圧がコントロールされているのは,わずか1200万人であります。つまり,残りの3100万人の方は,自分が高血圧であるか知らない(1400万人),知っていながらも治療がなされていない(450万人),治療をしていても目標に達していない(1250万人)方々です。(#1 刊行によせて より引用)

その3100万人の治療のために高血圧症に対して情報を発信しています。健康診断で血圧高値を指摘された時など,当院をぜひ受診下さい。

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