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アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症とはもの忘れを主な症状とした脳の変性疾患です。アルツハイマー型認知症は認知症の原因としては最多です。糖尿病や高血圧症などがリスクとなり、75歳以上に多い疾患です。初期症状はもの忘れが多いです。進行すると家事ができなくなったり迷子になったりして生活に支障をきたします。人口の高齢化に伴いアルツハイマー型認知症の方が増加しており、社会的注目が集まっています。

 

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症の原因ははっきりとわかっていません。アルツハイマー型認知症の原因として、現在ではアミロイド仮説が有力視されています。アミロイド仮説とは、アミロイドβ蛋白が神経細胞の外にたまるのがアルツハイマー型認知症の原因であるという説です。タウ蛋白が生じ脳の神経細胞が変性していくとされています。タウ蛋白こそがアルツハイマー型認知症の原因であるという仮説もあります。現代医学ではアルツハイマー型認知症の発症に、アミロイドβ蛋白とタウ蛋白が主要な役割を果たしているのは確実視されています。

 

アルツハイマー型認知症に対しての研究における課題

アルツハイマー型認知症に不明な点が多いことが、治療薬開発がなかなか進まない理由の一つです。認知症の研究では動物実験が困難です。人間の認知症は人間社会でしか評価できない病気です。認知症のマウスの認知機能を、どうやって評価するのか定まっていません。認知症の研究が現在も世界中で進められており、近い将来はっきりとした原因やより有効な治療薬が開発されると期待されています。

 

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症の症状はもの忘れを中心とします。実際に起きる症状は多様性に富んでいます。アルツハイマー型認知症による変化が脳のどの部分にどの程度起きるか、元々のその方の脳の機能にどういった支障が起きるか、ということによって実際に起きる症状が決まります。

中核症状 脳の障害による直接的な症状 もの忘れ、計算ができない、日付や場所がわからない
行動・心理症状(BPSD) 脳の障害に他の因子(環境変化や周囲の関わり)が加わって生じる症状 ふさぎこむ、怒り易くなる、大声を出す、昼夜逆転、幻覚、妄想

アルツハイマー型認知症の症状は中核症状、行動・心理症状(BPSD)に分けて考えます。BPSDは脳の障害に環境変化などの他の因子が加わり生じます。アルツハイマー型認知症の中核症状は、急に進行することはありません。通常年単位でゆっくり進行します。『急に家族とトラブルが起きるようになった』『急に全く外に出なくなりあまり食事も食べてない』というのは、BPSDによるものです。主に介護を困難にしているのはBPSDですが、BPSDはうまく環境調整することにより改善/消失させることも可能です。アルツハイマー型認知症の症状は非常に多彩であり、下のページで細かく解説しています。

アルツハイマー型認知症の症状

 

アルツハイマー型認知症の進行

アルツハイマー型認知症ではFASTという指標で評価しています。

FAST   代表的な症状
1 正常  
2 正常老化

物の置き忘れなど

3

軽度認知障害

MCI

複雑な仕事の効率が低下する

日常生活には支障がない

4 軽度アルツハイマー型認知症

家計の管理が困難

買い物で同じ物を買う

5 中等度アルツハイマー型認知症

気候にあった服を選べない

着替えや入浴を嫌がる

迷子になる

6 やや高度のアルツハイマー型認知症

1人で入浴できない

遠くに住んでいる家族の顔を忘れる

尿失禁、便失禁

7 高度のアルツハイマー型認知症

限られた言葉しか話せない

言葉を理解できない

歩行できない

アルツハイマー病は何十年もかけてゆっくり進行します。アルツハイマー型認知症の原因であるとされるアミロイドβ蛋白は通常40-50歳代から徐々に脳に溜まっていきます。30年ほどは生活に支障をきたすことはなく、75歳以上になりアルツハイマー型認知症を発症するとされています。発症後は5-10年という単位でゆっくりと進行します。

FAST4:軽度のアルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症の症状は記憶障害がゆっくり進行していくので、加齢によるもの忘れと間違えられやすいです。徐々に日常生活や社会生活に影響が出るようになり、周囲の人達に気づかれるようになります。最初に数時間から数日前の記憶が低下します。記憶障害が目立ってくる頃に、日常生活が段取りよく行えなくなります。今まで普通にできていたことができなくなったり、時間がかかるようになります。この時本人は、「なにかおかしい」と感じつつも、他の能力で補うことでなんとかいつも通りにしようと努力します。今までのようにできないことに対し、苛立ちや焦りを感じたり、悲観的になってしまう方もいます。しかし、カレンダーに約束を書き込んだり、メモをとるなど少しの工夫で自立した生活を送ることができます。家庭内での生活は自立しています。買い物や遠くへの外出といった限られた場面のみ手伝うことにより、社会生活は問題なく過ごせます。

FAST5:中等度のアルツハイマー型認知症

言葉を理解することが徐々に難しくなります。単語を言い間違えたり、言葉が思い浮かびにくくなり、流暢に会話をすることが難しくなります。集中して話を聞いたりすることが大変になり、騒音など落ち着かない環境だと、注意が保てなくなることがあります。この頃の本人は、場所や時間が分からなくなったり、記憶を保持していることが難しくなるのでとても混乱します。環境の変化に適応することに時間がかかり、BPSDが最も起きやすい時期でもあります。そのため、環境への配慮が必要となります。短い文章や分かりやすい言葉を使ったコミュニケーションやアイコンタクト、ジェスチャーなどの非言語的コミュニケーションは問題なくできるので複数の方法を組み合わせて関わることで意思疎通を図ることは十分に可能です。家庭内での生活に支障をきたすので、家族のサポートもしくは介護サービスが必須になります。

FAST6-7:やや高度もしくは高度のアルツハイマー型認知症

文章の構成が困難になり、言葉の理解が難しくなってきます。話すことが徐々に少なくなり、無言になることもあります。社会への関心が乏しくなり、歩行などの身体活動も減少します。便失禁は衛生上の問題も考える必要があります。家族のサポートや介護サービスがない場合は、ほぼ確実に生活が破綻します。ご家族と相談し、社会資源の有効活用を検討していく必要があります。

 

アルツハイマー型認知症の薬物治療

アルツハイマー型認知症の治療は、中核症状への治療とBPSDへの治療に分かれます。軽度のアルツハイマー型認知症ではBPSDを生じることは少なく、薬物治療は中核症状のみに対して行うことがほとんどです。

中核症状への薬物治療は、残った脳神経細胞の働きを助ける治療です。認知症の進行を抑える作用があります。アルツハイマー型認知症の診断に至った場合は、基本的に薬剤治療を導入しています。

BPSDへの治療はは非薬物治療が中心になります。環境変化により起きた症状は、環境を正すことにより治療します。ただ非薬物治療の効果が不十分な場合や効果が見込めない場合は、薬剤治療を行うことがあります。その場合はBPSDにより本人もしくは周囲の方にどういった社会的損失を生じているか というのが大事です。例えば周囲の方とトラブルを繰り返している場合や介護者の負担が大きく生活に支障が出ている場合は、治療目的と目標を明確にして薬剤治療を行います。

 

アルツハイマー型認知症のケア

アルツハイマー型認知症の治療はケアが占める部分が大きいです。アルツハイマー型認知症の方は、日常生活で困難が生じて大きな不安を抱えています。生活に寄り添い、適切なタイミングで必要な介護サービスを導入する必要があります。当院では認知症看護外来で定期的に看護師が時間をかけて話を伺います。対象となる方には直接ご案内致します。

認知症看護外来

 

アルツハイマー型認知症と診断された方へ

アルツハイマー型認知症の診断により、人生の価値が変わることはありません。初めての経験であり、不安なことも多いと思います。不安なことや心配なことは、当院を含め社会全体で受け止めていきます。些細なことでも構いませんので、何でもご相談下さい。

 

さいごに

アルツハイマー型認知症に対する正しい理解や治療、ケアはまだまだ社会で不足しています。当院では看護外来などを活用し、アルツハイマー型認知症の方を継続的に支援できる体制を目指しています。お困りの際はぜひご相談下さい。

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