足のむくみ
足のむくみはよく見られる症状です。その中に心不全や腎不全によるむくみが一定数存在しています。足のむくみに対して医学的にどういった考え方を行なっているか解説していきます。
足のむくみとは
足は体の中で最も下にあるため、重力の影響で水分が溜まりやすいです。そのため全身の中で最もむくみが生じやすいです。なお「夕方だけむくむ」というのは病的なむくみとは判断していません。心不全や腎不全など全身疾患の場合は両足がむくみます。静脈血栓症やリンパ浮腫といった疾患では通常片足のみがむくみます。両足のむくみと片足のむくみに分けて考えます。
両足のむくみ
両足のむくみは全身性の疾患により生じます。主な原因としては心不全、慢性腎臓病、肝不全、低栄養、薬剤性、甲状腺機能低下症、特発性が挙げられます。主に血液検査で調べています。
心不全
心不全の場合は体の血液の循環がよどみ、体に余分な水分が溜まります。最も溜まりやすいのが一番下にある足です。心不全は進行すると息切れや呼吸困難を生じます。足のむくみの時点で適切に対処する必要があります。血液検査や胸部レントゲン、心電図、心エコーなどで診断を行っています。下のページをご参照ください。
慢性腎臓病
慢性腎臓病は一般的には無症状ですが、腎臓の機能が大きく低下するとむくみを起こします。血液検査と尿検査で判断します。下のページをご参照ください。
肝不全、低栄養
肝不全は肝臓の機能が低下してしまう状態です。低栄養とは何らかの原因で食事が取れない状態です。どちらもアルブミンという血液中のタンパク質が低下することによりむくみが生じます。血液検査で診断します。
甲状腺機能低下症
体のホルモンの異常で浮腫が生じることがあります。代表的なものは甲状腺機能低下症です。血液検査で診断します。
薬剤性浮腫
薬剤性浮腫とは薬の副作用によりむくみが生じる状態です。カルシウム拮抗薬という血圧の薬や痛み止めが原因となることが多いです。あくまで心不全や慢性腎臓病などでない場合に薬剤性浮腫と診断しています。
特発性浮腫、加齢に伴う慢性下肢浮腫
特発性浮腫とは20-50代女性に生じることが多い浮腫です。立ち仕事などが多いことや女性ホルモンの変動が関与しているとされています。利尿剤で一時的に良くなることもありますが、安易な利尿剤使用は特発性浮腫の病態を悪化させます。美容目的で足を細く見せるために利尿剤を内服している一部の若年女性が、特発性浮腫に陥ることがあります。利尿剤の長期投与により腎臓の塩分の排泄に異常をきたし、特発性浮腫が増悪します。基本的には塩分制限や弾性ストッキング、足を心臓と同じ高さにするといった理学療法が第一選択です。
浮腫は加齢と共に増えていきます。運動不足や筋力不足、皮膚疾患などが関与していると言われています。基本的には運動と適切な食生活が第一選択です。高度に浮腫を生じて生活の支障になる場合、浮腫により皮膚の感染などが生じるリスクが高い場合のみ薬剤で治療を行なっています。
片足のむくみ
片足のむくみは全身性の疾患では生じません。主な原因としては下肢静脈血栓症、下肢静脈瘤、リンパ浮腫、皮膚の感染や炎症が挙げられます。
下肢静脈血栓症
足から心臓に戻る血管に血の塊が生じる病気です。血液が停滞し片足のむくみが起きます。下肢エコー検査で診断しています。治療は血液サラサラの薬を用います。
下肢静脈瘤
足の血管がコブのように膨らむ病気です。静脈の弁が壊れて血液が逆流することが原因です。治療としては血管内手術が有用です。必要な際は治療可能な医療機関に紹介します。
リンパ浮腫
リンパの流れが悪く足が腫れる病気です。よく乳がんの手術後に腕に生じます。足のリンパ管の異常をきたすと足のむくみを生じます。弾性ストッキングが第一選択です。高度かつ難治性の足のむくみが生じると、皮膚の感染症などを合併します。
皮膚の感染や炎症
細菌が皮膚から入った感染症や慢性湿疹なども足のむくみの原因になります。必要な際は皮膚科に紹介します。
最後に
足のむくみは心不全や慢性腎臓病を早期に見つける大切なサインです。足のむくみで悩稀ている方は非常に多く、足のむくみに適切に対処する必要があります。単に利尿剤を内服するという対処では、時に有害であることもあります。お困りの際は当院にご相談下さい。