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頭痛、片頭痛

頭痛のほとんどは緊張型頭痛と片頭痛と呼ばれるものです。緊張型頭痛の方が患者数は多いですが、片頭痛の方が症状が強いです。日本人は3人に1人が慢性頭痛を有しており、特に片頭痛は欠勤や生産性低下などによる経済損失をきたします。日本における頭痛による経済損失は年間3000億円と試算されています。頭痛症は「命に別状ない病気」ではなく、「生活の質を低下させ社会に大きな悪影響を与える疾患」です。多くの方が痛み止めを飲むだけという治療を長年続けており、頭痛が悪化しています。当院では特に仕事や学校を休む頭痛発作を起こしたことがある方に対して、正確な診断や予防法の導入の検討を行なっています。

 

片頭痛

片頭痛は生活の支障となる疾患です。男性より女性が3倍多いです。20-40代の女性に多く、仕事や育児の支障となります。典型的には10代で発症し、50歳前後で消失することが多いです。妊娠中は軽減する点や月経周期に関連することがある点より、女性ホルモンが関与していると考えられています。なお月経の際に頭痛が生じている方は、多くの場合月経関連片頭痛です。重度の片頭痛のことが多いですが、「生理痛で頭が痛くなっている」と思っていることが非常に多いです。片頭痛と診断、治療することにより改善が見込めます。

片頭痛の病態

片頭痛の正確な病態は未だに解明できていない部分があります。硬膜という頭蓋骨の裏にある組織の血管と神経が関与しているという説が有力です。何らかの原因で頭部にある三叉神経という神経が刺激され、神経伝達物質が硬膜の周囲に放出されます。それにより硬膜の血管が拡張し、頭痛が生じるとされています。痛みを伝える神経自体の炎症も関与しているとされています。三叉神経は自律神経に関与しており、気分不快や嘔吐をきたすとされています。片頭痛の本質は三叉神経系の神経の炎症とされています。

片頭痛の診断基準

診断基準としては

①頭痛発作の時間が4-72時間

②以下の4つの特徴のうち2つ以上を満たす

A. 片側性、B. 拍動性(ズキズキした感じ)、C. 中等度以上の頭痛(生活に支障のある頭痛)、D. 歩行などにより増悪

③頭痛発作中に以下のうち1つを満たす

A. 吐気または嘔吐、B. 光過敏、音過敏(光や音で頭痛が悪化する)

④他の頭痛の原因がない

①〜④を満たす発作を5回以上繰り返した際に片頭痛と診断しています。片側の頭痛を片頭痛と呼んでいるわけではありません。また片頭痛には前兆が見られることがあります。典型的には「キラキラした光、ギザギザの光が見えると、1時間以内に頭痛が始まる」といった症状です。動作や音、光などで頭痛が悪化するため、片頭痛発作時は学校や仕事に行くのが困難となります。

片頭痛の治療

治療は、片頭痛が起きた際の治療と予防の治療に分かれます。片頭痛は市販の痛み止めが効かないことが多いです治療の目標は、頭痛を消失させることではなく頭痛による生活の障害を取り除くことです。生活に支障がないにも関わらず頭痛が残っているからという理由で、薬を闇雲に追加していくことはありません。

片頭痛には誘発する物質があることが知られています。天候変化やアルコール摂取が挙げられますが、ワインやチーズといった食品も誘因になります。生活に支障を生じている片頭痛であれば、誘因を探すよう推奨します。頭痛についての記録があると治療の効果判定に有用です。下に携帯で記録可能なアプリの頭痛Clickと、日本頭痛学会が提供している頭痛ダイアリーとを載せてあります。いずれかの記録をお願いします。

頭痛Click https://intro-headache.vitalnote.jp/ZutsuClick/

頭痛ダイアリー https://www.jhsnet.net/pdf/headachediary.pdf

片頭痛が起きた際の治療としてはトリプタンという薬剤を使用しています。血管の拡張を抑える作用があり、片頭痛の発作に有効です。心筋梗塞や脳血管障害、重篤な肝疾患では禁忌にあたるため、初診時に血液検査や心電図を行います。新規処方時には頭部MRIを施行しています。片頭痛の診断にはMRIで他の頭痛の原因がないことが必要です。服薬は「頭痛が始まってすぐの早期、軽症時」が最も有効です。前兆時に内服しても無効です。頭痛が始まってからなるべく早く服薬することが原則です。服薬後も効果が不十分な場合は、数時間後に追加服薬することが可能です。トリプタンの効果が不十分な場合は、トリプタンの種類の変更やインドメタシンという痛み止めの追加を行います。トリプタンは重篤な副作用の報告はほとんどなく、安全性の高い薬とされています。

予防治療は、急性期治療のみでは頭痛による生活の支障が取り除けない場合に実施します。急性期治療の実施日数が10日以上であれば予防療法の絶対的適応、急性期治療の実施日数が2日以下であれば予防治療は不要 というのが一般的な考え方です。2-10日の場合は状況に合わせて判断します。予防治療はいくつか種類があります。2ヶ月程度の使用で効果を判定しています。当院ではカルシウム拮抗薬であるロメリジン、ベラパミル、抗てんかん薬であるパルブロ酸、レベチラセタム、β遮断薬であるプロプラノロール、漢方である呉茱萸湯を用いています。

 

薬物乱用頭痛

薬物乱用頭痛とは、痛み止めを長期的に過剰使用することにより生じる頭痛です。大部分は元々片頭痛を有していた方が、市販の痛み止めを頻繁に内服し生じます。ほとんどが女性です。月に10日以上痛み止めを、3ヶ月以上内服すると生じると言われていますが、一般的に薬物乱用頭痛になるまで2-3年がかかります。

頭痛の病態としては不明な点が多いですが、痛みを抑える脳の機能の低下や痛みを感じる神経の異常が生じているとされています。

治療には頭痛の継続的な記録が必要です。まずは原因の薬剤を中止しますが、中止するのみでは元々あった頭痛が出現します。多くの場合は片頭痛であり、予防薬や他の痛み止めを組み合わせて安全に原因薬剤を中止します。数ヶ月かけて原因薬物の中止を目指します。その後は頭痛の頻度や強さに応じて、薬物を調整していきます。

 

緊張型頭痛

最も多いタイプの頭痛です。頭痛は10分〜数日持続し、両側性の頭の圧迫感であることが多いです。生活の障害は少なく、日常的な動作による増悪はありません。吐気などもありません。首や肩の筋肉の緊張が関与していることが多いです。たまに生じる際には大きな問題はありませんが、頻度が増加し慢性化すると生活に支障が出ます。慢性化すると一般的な痛み止めの乱用につながるため、漢方である釣藤散や筋弛緩薬、慢性疼痛に対する薬剤治療を行います。

 

慢性連日性頭痛

慢性連日性頭痛とは、1日4時間以上の頭痛が1ヶ月に15日間以上、3ヶ月以上継続しているものです。多くは片頭痛、緊張型頭痛、薬物乱用頭痛が複合しており、頭痛の性状も変化しています。この場合もまずは頭痛の記録を残し、病態を推定し治療の計画を立てることから始まります。

 

群発頭痛

群発頭痛は激しい頭痛が数週から数ヶ月の間に頻発する疾患です。20-40代の男性に多いです。頭痛は強烈であり、「人類最悪の痛み」と表現されています。15-180分の片側の頭痛を1日2-8回繰り返します。自律神経を介して目の充血や涙、発汗などを生じます。ほぼ例外なく飲酒で頭痛が生じると言われています。頭痛時に効果があるのはトリプタンの皮下注射のみと言われています。群発頭痛は予防治療が必須です。ベラパミルとステロイドの治療が有効とされています。

 

最後に

一説には頭痛を来す病気は200種類あると言われています。全てを検査するのは不可能であり、またそんな必要もありません。大事なことは、脳出血や髄膜炎など命に関わる病気を正確かつ速やかに診断することと、頭痛により障害された生活の質を取り戻すことです。頭痛でお困りでしたらご相談下さい。

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