メニュー

糖尿病

糖尿病は世界的に罹患者が爆発的に増えています。私見ですが脂質異常症、特に高LDL血症の治療は既に完成していると考えてます。極論を言ってしまえば全員PCSK9阻害薬という注射をしてLDL50未満にすれば心筋梗塞はほぼ無くなるのでは無いかと思います。脂質異常症については、今後「限られた医療資源をいかに適切に社会に還元するか」に焦点が置かれていきます。翻って糖尿病の治療は単に血糖を下げるだけでは解決しません。仮に全員にインスリン注射を行っても、おそらく多くの糖尿病の方の寿命はほとんど変わらないはずです。

以下に糖尿病についての解説を記します。

 

糖尿病とは

糖尿病とは、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が高い状態を指す病気です。日本では1000万人の糖尿病患者さんがいると言われています。糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病という2つに分類されますが、世の中の糖尿病の9割以上は2型糖尿病でありここでは2型糖尿病を対象に説明します。

2型糖尿病の原因は糖分の摂取過剰です。糖分は体内でブドウ糖として利用されます。ブドウ糖を細胞に取り込むホルモンがインスリンです。慢性的な糖分過剰摂取が生じると、血糖を一定に保つためにより多くのインスリンが放出されます。この状態が長く続くと、インスリンの効果が低下します。それにより血糖を一定に保てなくなり血糖が上がります。血糖が持続的に上昇している状態を糖尿病と呼びます。

インスリンを一生で分泌できる量は大体決まっている と言われています。つまり言い換えれば、一生で摂取できる糖分は大体決まっています。糖尿病になったということは、「今のペースだと一生で摂取できる糖分の量をオーバーしてしまう」ということです。

糖尿病の病態の本質は、インスリンの効果が低下することだと言われています。糖尿病の前段階である耐糖能異常という状態がありますが、耐糖能異常においても動脈硬化のリスクは大きく上昇します。糖尿病というのは、既に糖分過剰摂取が長期間持続し血中の糖を一定に保てなくなっている状態です。食事などの生活指導がもちろん大事ですが、生活指導のみで元通りの状態には戻らないことがほとんどです。糖尿病は診断時に速やかに薬物治療を行なっています。

 

糖尿病は増えている

糖尿病に罹患する人口は世界的に増えています。日本では「糖尿病が強く疑われる人」は1997年に約690万人、2002年に約740万人、2016年に約1000万人と徐々に増加しています。現在は人口の約12%が糖尿病に罹患していると推定されています。

https://dm-net.co.jp/calendar/2003/001954.php

https://dm-net.co.jp/calendar/chousa/population.php

ただ実は糖尿病が多くの人が罹患する病気となったのはここ最近の話です。戦前は糖尿病は非常に稀な病気でした。中国のデータになりますが、1980年は糖尿病の罹患率は1%以下です(2013年の中国の糖尿病罹患率は11.6%とされており、アメリカを抜いて世界第一位の糖尿病大国です。)。

一般的に糖尿病に罹患すると平均寿命が10年縮むと言われていますが、近年は糖尿病の方の平均寿命が徐々に延びています。糖尿病は予防することと、かかってしまったらきちんと医療機関を受診し治療を受けることが非常に大事です。

 

糖尿病の症状

糖尿病自体の症状は、高血糖による喉の渇き、倦怠感、体重減少が挙げられます。ただ症状が出現するのは糖尿病がかなり進んだ段階です。現代の日本では糖尿病自体の症状を来すまで2型糖尿病を放置している方は多くありません。ここでは糖尿病の合併症による症状について主に述べます。神経障害、網膜症、腎症の3つを3大合併症と呼び、この順番に生じます。3大合併症の他に、認知症や心血管疾患の合併が多いことが知られています。

症状が多岐にわたるため別ページで解説しています。糖尿病と診断された方は必ず読むようにお願いします。

糖尿病の症状

 

糖尿病の診断

糖尿病の診断は、血液検査で行います。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/55/7/55_485/_pdf/-char/ja

糖尿病の診断には、慢性的な高血糖が持続していることの確認が必要です。HbA1cは直近2-3ヶ月の血糖の平均値を反映しています。HbA1c 6.5以上を糖尿病型としています。ただ糖尿病の診断にはHbA1c 6.5以上は必須ではありません。HbA1c 5.7-6.5の中にも一定の割合で糖尿病患者が含まれています。当院では早期診断と治療のために、ブドウ糖負荷試験を行なっています。主に糖尿病の診断により治療法や方針が変わる際に行なっています。

ブドウ糖負荷試験

 

糖尿病の非薬物治療

糖尿病の治療目的は、日常生活の維持と合併症の予防です。まず食事療法と運動療法が必須となります。

食事療法

食事療法が糖尿病の肝となります。ほとんどの糖尿病は食生活が問題であり、食事を改善しない限りは糖尿病の改善は見込めません。人間は人生で摂取できる糖分には限界があり、糖尿病になったと言うことは「このままのペースでは摂取できる糖分量の限界を超えてしまう」という事です。まずそれを意識し生活を変えていく必要があります。糖分摂取を抑えるためには、バランス良い食事、適正なカロリー摂取、欠食や過食を避けるといった項目が一般的です。

食事療法において、戦前に糖尿病がほとんどいなかったということがヒントになります。日本は以前より米が主食でしたが、米を食べてもそこまで糖尿病はいなかったということになります。昔の日本食になるべく戻すような説明をしています。現代の食事は精製された糖質が非常に多いです。お菓子やジュースなどの「甘く味つけられたもの」と言うとイメージしやすいと思います。このような加工された食品には、自然界には存在しない濃度で糖分が濃縮されています。まずはお菓子やジュースを控えることが大事であり、炭水化物を控えるのはその次の段階です。必要な際は他院と連携を取り栄養指導を行います。

運動療法

運動療法の最大のメリットは、インスリンが効きやすくなることです。インスリン代謝には筋肉細胞が関与しており、運動不足が多くの糖尿病に関わっています。運動は全ての心疾患や脳神経疾患の予防、健康寿命の向上につながります。

運動には有酸素運動と筋力トレーニングがあります。一般的には、少しきついと感じるくらいの有酸素運動が推奨されています。例としてジョギングや水泳などが挙げられます。週3回、1回30分以上で効果があるとされています。近年は筋力トレーニングの有用性も報告されています。有酸素運動より短い時間で同等の効果があるとされています。仕事をされている方などは筋力トレーニングも選択肢の1つです。

 

糖尿病の薬物治療

糖尿病に対しては食事療法と運動療法に加え、薬物治療を行います。糖尿病の本質はインスリンの作用不足であり、食事療法や運動療法で完全に元に戻ることは少ないからです。薬物治療の種類としては、ビグアナイド、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体拮抗薬、DPP-4阻害薬、インスリンが主です。下のページで解説します。

糖尿病の薬物治療

糖尿病の薬物治療においては、血糖を下げる治療と同じくらい血圧やコレステロールの治療が大事です。血圧もコレステロールも、糖尿病の場合はより低く保つことが推奨されています。具体的には

  • 収縮期家庭血圧125mmHg以下
  • LDLコレステロール120mg/dl以下

と示されています。当院では血糖と同様、血圧とコレステロールに対して包括的に治療していきます。

 

最後に

糖尿病の治療はまず糖尿病を知ることから始まります。単に血糖が高いだけではなく、多くの合併症を起こします。種々の合併症に対処していく必要があります。お困りの際はご相談ください。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME