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増え続ける「心不全」

[2025.06.19]

近年、日本は超高齢社会へと突入し、それに伴い私たちの健康を取り巻く課題も多様化しています。中でもその数を増やし続けている病気があります。それが「心不全」です。「心不全パンデミック」という言葉が使われるほど患者数が増加しているにもかかわらず、その真の姿や恐ろしさについては、残念ながらまだ十分に理解されていないのが現状です。

 

「命を落とす病気」ではない、進行性の疾患

皆さんは「心不全」と聞いて、どのようなイメージを抱くでしょうか。ある興味深い調査結果があります。それは、「心不全」という言葉を知っている人は97.7%とほぼ全てであるにもかかわらず、その症状や病気の内容まで正確に理解している人はわずか27.3%に過ぎないというものです。さらに驚くべきは、そのうち半数以上が「心不全は人間が命を落とした時の診断名」と誤解している実態が明らかになったことです。

この誤解が、心不全の早期発見と治療を妨げる大きな壁となっています。心不全は、心臓の機能が低下し、全身に必要な血液を十分に送り出せなくなる状態を指します。これは決して、突然命を落とすような病気ではありません。むしろ、息切れやむくみといった軽微な症状から始まり、ゆっくりと、しかし確実に進行していく慢性的な病気です。高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈などの生活習慣病が主な原因となることが多く、これらの病気を持つ方が適切な治療を受けずに放置すると、心臓の機能は不可逆的に悪化の一途をたどり、最終的には日常生活を送ることすら困難になるほど重症化してしまいます。

 

 

心不全の認知度と理解度の実態

2017年の調査から、心不全に対する一般的な認識と、その内容への深い理解との間に大きなギャップがあることが示されています。

「心不全」の名称を知っている人の割合
 

(全世代対象)

症状や内容まで正確に理解している人の割合
 
「心不全は人間が命を落とした際の診断名」と誤解している人の割合
 

(正確に理解している人のうち半数以上)

このデータは、多くの方が「心不全」という言葉は知っていても、その具体的な病態や症状、進行性について、十分な知識をお持ちではない現状を示しています。特に、「命を落とした際の診断名」という誤解は、心不全が進行性の病気であり、早期のケアが重要であるという認識を妨げる大きな要因となっています。

心不全は、早期に発見し、適切な治療や生活習慣の改善を行うことで、その進行を遅らせ、生活の質(QOL)を保つことが可能です。ご自身の心臓の健康に関心を持ち、気になる症状があれば、どうぞお気軽に専門家にご相談ください。

(出典:公益財団法人日本心臓財団 2017年10月31日 報道用資料より)

 

「年のせい」と見過ごされるサインが危険な理由

「最近、少し歩くと息が切れるようになった」「夕方になると足がむくんで靴がきつくなる」「夜中に咳が出て眠れないことがある」「横になると息苦しい」「急に体重が増えた」――。もし、こうした症状に心当たりがあるなら、それは心不全の初期サインである可能性が十分にあります。しかし、多くの方がこれらの症状を「もう年だから体力がないだけ」「座りっぱなしだからむくむのは当然」「風邪が長引いているだけ」などと自己判断し、医療機関の受診をためらってしまいます。

特に、心不全は高齢者に多い病気という認識が根強いため、「まだ若いから関係ない」と考える若年・中年層も少なくありません。しかし、生活習慣病を抱える若い世代でも発症リスクは高まっており、気づかないうちに心臓に負担がかかっているケースもあります。症状が心不全と結びつかないことで、早期発見の貴重な機会を逃し、病気が進行してからようやく医療機関を訪れるという悪循環に陥ってしまうのです。

 

早期発見のカギは「知る」ことから

心不全の進行を食い止めるためには、早期発見と適切な治療、そして生活習慣の改善が不可欠です。そのためにはまず、私たち一人ひとりが心不全という病気について正しく理解し、自身の体のわずかな変化にも意識を向けることが重要です。

すみだブレインハートクリニックでは、心不全に関する正しい知識を広め、地域の皆様の健康をサポートすることに尽力しております。前述のような気になる症状がある方は、決して自己判断せずに、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。血液検査で心臓への負担度や心不全のリスクを評価することも可能です。

心不全は決して「命を落とす」と諦めるしかない病気ではありません。早期に介入し、適切な管理を行うことで、進行を遅らせ、質の高い日常生活(QOL)を維持することが十分に可能です。あなたの健康な毎日を守るために、今一度、ご自身の心臓に耳を傾け、心不全について真剣に考えてみませんか。

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