血圧が高いのは「病気」なのか?~症状がなくても治療が必要な理由~
はじめに
「健康診断で血圧が高いと言われたけれど、特に症状もないし大丈夫だろう…」
そう思っていませんか? 血圧が高い状態、つまり高血圧は、れっきとした「病気」です。自覚症状がほとんどないため、「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれ、気づかないうちに体に深刻なダメージを与え続けていることが少なくありません。
1. 症状がないのになぜ「病気」なのか?
高血圧とは、血管に血液が慢性的に高い圧力をかけ続けている状態です。家庭での血圧測定で収縮期血圧(上の血圧)が135mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が85mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。
高血圧症の基準:家庭血圧135/85mmHg以上
多くの方は、よほど血圧が急激に上がらない限り、自覚症状を感じません。しかし、症状がないからといって、体の中で何も起きていないわけではありません。
高血圧が続くと、全身の血管に常に大きな負担がかかり、血管の内壁が傷つき、硬くもろくなっていきます。これが、生活習慣病の元凶である**「動脈硬化」**です。
動脈硬化は、血管が狭くなったり弾力性を失ったりする状態ですが、初期の段階では何の症状も現れません。
2. なぜ症状がないのに治療する必要があるのか?
症状がないのに高血圧を治療する必要があるのは、放置すれば将来的に命に関わるような重大な病気を引き起こすリスクが劇的に高まるからです。高血圧は、心臓、脳、腎臓など、生命維持に不可欠な臓器を直接攻撃する「元凶」となり得るのです。
高血圧が進行すると、動脈硬化がさらに進み、以下のような病気を招く可能性が高まります。これらは健康寿命を奪い、最悪の場合、命にかかわる病気ばかりです。
・心筋梗塞・狭心症:心臓への血流が阻害され、心臓発作につながります。
・心不全:心臓のポンプ機能が低下し、息切れやむくみが現れ、日常生活に支障をきたします。
・脳卒中(脳梗塞・脳出血など):脳の血管が詰まったり破れたりする病気で、重篤な後遺症を残したり、命を落としたりするリスクが高いです。
・認知症:脳の血流が低下し、脳が萎縮してしまうことにより記憶力など脳の機能が低下します。
・慢性腎臓病 (CKD):腎臓の機能が低下し、最終的に人工透析が必要になることもあります。
・大動脈瘤・大動脈解離:大動脈の壁が弱くなり瘤ができたり、壁が裂けたりする病気で、破裂すると命に関わります。
これらの病気は、高血圧を放置した結果として発症することが少なくありません。
3. 早めの治療で「未来の健康」を守る
高血圧は、自覚症状がないからこそ、健康診断などで指摘された時点で積極的に治療に取り組むことが非常に重要です。
高血圧の治療は、単に血圧の数値を下げるだけではありません。最も重要なのは、将来的な心筋梗塞、脳卒中、腎臓病などの重篤な合併症を予防し、健康寿命を長く保つことにあります。
血圧が目標に達しない場合は、医師の判断で降圧薬が処方されます。降圧薬は、血圧を下げることで血管への負担を軽減し、動脈硬化の進行を抑える役割を果たします。薬を飲むことで健康を維持していると考えましょう。
まとめ
高血圧は、放置すれば将来の健康や命を脅かす「病気」です。健康診断で高血圧を指摘されたら、症状がないからといって決して軽視せず、早めにクリニックを受診し、適切な診断と治療を開始しましょう。
何かご不安な点があれば、いつでもお気軽にご相談ください。