なぜ心臓が悪いと足がむくむのか?
はじめに
夕方になると靴がきつくなる、足がパンパンに張る……。 こうした「足のむくみ」を経験したことがある方は多いでしょう。多くの方は「立ち仕事だから」「歳のせいだから」と放置してしまいます。
しかし、循環器専門医としてはむくみは危険なサインです。足のむくみは心不全の初期症状である可能性があります。
今回は、なぜ心臓が悪いと足がむくむのか、そして「放置してはいけないむくみ」の見分け方について解説します。
なぜ心臓が悪いと「足」がむくむのか?
心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。 心臓の機能が低下すると、血液を送り出す力が弱まり、血液がスムーズに循環しなくなります。
すると、全身の血液の流れが停滞してしまいます。行き場を失った血液中の水分が血管から染み出し、重力の影響で一番低い位置にある足に溜まってしまいます。これが、心不全によるむくみの正体です。
放置するとどうなる?
足に水が溜まっている段階で適切な治療を受ければ、多くの場合、内服薬(利尿剤など)で改善できます。しかし、これを放置すると、溢れた水分は行き場を求めてどんどん上に上がってきます。
最終的に水分が「肺」にまで溜まると、酸素を取り込めなくなり、激しい呼吸困難に陥ります。「夜、横になると苦しくて寝られない」という状態は、まさに命に関わる緊急事態です。
「危険なむくみ」チェックリスト
以下の項目に1つでも当てはまる場合は、要注意です。診察室でご相談ください。
① 「指の跡」が消えない
足首やすねを指で5秒間強く押してみてください。 指を離した後、くっきりと跡が残り、なかなか元に戻らない場合は、体内にかなりの余分な水分が溜まっています。
② 1週間で2kg以上の「急激な体重増加」
脂肪が1週間で2kg増えることはまずありません。この急激な体重の増加の原因は、体に溜まった水分です。心不全の悪化を知らせる最も重要なサインの一つです。
③ 息切れを伴う
「むくみ」と一緒に「階段で息が切れる」「以前より疲れやすい」といった症状がある場合、心臓のポンプ機能がかなり低下している可能性があります。すでに足以外の場所に水が溜まっているかもしれません。
受診した際に行う「心臓の精密検査」の流れ
「むくみ」を主訴に来院された場合、当院では主に以下のステップで原因を特定していきます。どの検査も痛みはほとんどありませんので、ご安心ください。
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問診と身体診察
まずは、いつからむくみがあるのか、息切れなどの他の症状はないか詳しくお話を伺います。その後、実際に医師が足のむくみの状態を確認します。
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胸部レントゲン検査
心臓が大きくなっていないか(心拡大)、肺に水が溜まっていないか(肺うっ血)を確認します。心不全の進行度を客観的に判断する、非常に重要な検査です。
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心電図検査
不整脈や心筋梗塞の痕跡がないかをチェックします。
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心臓超音波検査(心エコー)
ゼリーを塗って、モニターで「心臓が動いている様子」をリアルタイムで観察します。心臓の動きは正常か、弁膜症や心筋梗塞は無いかを確認します。
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血液検査(BNP値)
心臓にどれくらい負担がかかっているかを数値で表す「BNP」という項目を確認します。
さいごに
心臓病は早期発見・早期治療がすべてです。高血圧症や糖尿病などで通院している方は、次の3つを注意しましょう。
- 毎朝の体重測定:自分の「ベスト体重」を知り、急な増加を見逃さない。
- 足の状態を観察する:お風呂上がりなどに、すねを押してチェックする。
- 減塩を心がける:塩分の摂りすぎは、体内の水分を増やし心臓の負担になります。
