認知症の薬について「レカネマブ」
今日は認知症の薬について、特に最近アメリカで新しく認可された「レカネマブ」という薬のことを交えて解説していこうかと思います。
現在使用されている認知症の薬
認知症の6割ぐらいを占めるのが、アルツハイマー型認知症という認知症です。アルツハイマー型認知症に対しては日本では4つの薬が使われています。
- アリセプト
- レミニール
- イクセロンパッチ(リバスタッチ)
- メマリー
の4つです。この中で上の3つ(アリセプト、レミニール、イクセロンパッチ、リバスタッチ)はアセチルコリンを増やす薬です。昔はアルツハイマー型認知症の原因はアセチルコリンが少ないこととされていました。そのためアセチルコリンを増やす薬が開発されました。現在ではアセチルコリン自体がアルツハイマー型認知症の主な原因ではないと考えられています。アリセプト、レミニール、イクセロンパッチは、脳のアセチルコリンを増やし、残った脳の神経細胞を活性化させる薬です。それにより認知症の進行を抑えます。
メマリーは脳の神経細胞を保護する薬です。脳を保護することで認知症の進行を抑えます。
認知症の薬の歴史
上の4つの薬が開発、発売されたのは、いずれも10年以上前です。アリセプトに関しては1999年、20年以上前になります。アリセプト、レミニール、イクセロンパッチ、メマリーが開発された後の、2010年以降にアルツハイマー型認知症の研究が大きく進みました。アルツハイマー型認知症は脳にアミロイドベータという物質が蓄積し、脳の神経細胞が障害を受けて脳の神経細胞が少しずつ減っていって生じるということが分かってきました。
『アミロイドベータを抑える薬を開発すればアルツハイマー型認知症の特効薬になるのではないか』
こういったアイデアで多くの企業が薬の開発を進めてきました。しかしながら実用化に至る薬が開発まで至らない状態が続いてきました。
アデュヘルム
2021年にアデュヘルムという薬がアメリカで使用できることになりました。この時もある程度ニュースになりました。しかしながらアデュヘルムは
- 効果に疑問が残る(本当に効くのかイマイチはっきりしない)
- 値段が高い:年610万円ほどの薬剤の費用がかかる
この二つの点からアメリカでもあまり普及はせず、2023年現在日本やヨーロッパで使用はされていません。
レカネマブ
そこで2022年、レカネマブという薬が再度アメリカで使用可能になりました。この薬はどうやら
- アデュヘルムより有効性が高く
- アデュヘルムより安い(といっても年に400万円)
という点から、今度こそ普及するのではないかと期待されています。現段階ではレカネマブをどういう人に投与するのか、認知症がどれくらい進んだタイミングで投与していくのかという点が議論されています。
もう1つの問題は保険適応と値段の問題です。日本の保険制度とアメリカの保険制度は少し異なっていますが、アメリカの保険制度で年400万という費用をどこまで保証するのかが注目されています。
アメリカで普及したら今度はヨーロッパ日本と広がると思いますが、現段階ではアメリカで普及するか分かりません。
最後に
最後になりますが、認知症は社会全体の問題です。今後日本は少ない労働力で多くの高齢者を支えていかなければならないというのが明白です。どうやって認知症の人たちを社会全体で支えていくのかということがこれからのテーマになっていくと思います。
下のページで認知症について説明しています。よろしければお読みください。