家族性高コレステロール血症
家族性高コレステロール血症とは?
家族性高コレステロール血症とは遺伝的な要因で血液中のLDLコレステロールが増えてしまう病気です。LDLコレステロールは動脈硬化を引き起こすため、家族性高コレステロール血症では特に心筋梗塞の発症が多いと言われています。男性では40歳代、女性では50歳代で心筋梗塞を起こすことが多いとされています。
家族性高コレステロール血症の原因とは?
家族性高コレステロール血症は遺伝子異常により起きます。家族性高コレステロール血症の多くは原因遺伝子が特定されています。親や兄弟において遺伝性があり、家族性高コレステロール血症の診断基準でも家族歴が重視されています。遺伝子異常がLDLコレステロールの代謝に関わる代表的な機序として、下の3つが示されています。
1. LDL受容体
家族性高コレステロールの大部分はLDL受容体の遺伝子変異です。LDLは肝臓で作られて、血液を流れて細胞に届きます。細胞の表面にありLDLを受け取る役割を果たしているのがLDL受容体です。LDL受容体の数が減ったり機能が低下すると、細胞でLDLを受け取ることができずLDLが血液中に溢れてしまいます。
2. PCSK9
PCSK9とは細胞内でLDL受容体の分解に関わります。PCSK9が増加すると、LDL受容体が減り血液中のLDLが増加します。PCSK9に関わる遺伝子変異も家族性高コレステロール血症の原因となります。なおPCSK9を阻害するPCSK9阻害薬は脂質異常症の薬として使用されています。
3. ApoB-100
ApoB-100はコレステロールを構成するタンパク質です。LDLコレステロールに存在し、LDLとLDL受容体が結合するときにApoB-100が関与します。ApoB-100に変異をきたすと、LDLとLDL受容体が結合できずに血液中のLDLが増加します。欧米では家族性高コレステロール血症の原因としてよく見られますが、日本での報告はありません。
ホモ接合体とヘテロ接合体の違い
人間は生まれるときに父親の遺伝子と母親の遺伝子を1セットずつ受け取り、2つの遺伝子を有します。2つの遺伝子のうち1つの遺伝子が異常な遺伝子であるものをヘテロ接合体、2つとも異常な遺伝子である状態をホモ接合体と呼びます。ホモ接合体による家族性高コレステロール血症は極めて稀であり、難病指定されています。100万人に1人程度で、日本においては120人ほどとされています。通常LDL 450mg/dl以上であり、成人前に心筋梗塞を生じます。
日常診療で出会う家族性高コレステロール血症はほとんどヘテロ接合体と考えて差し支えありません。
家族性高コレステロール血症の方はどれくらいいる?
家族性高コレステロール血症は遺伝性の代謝疾患としては最多です。概ね500人に1人と言われています。治療を受けている脂質異常症の方の約8.5%程度は家族性高コレステロール血症と報告されています。
家族性高コレステロール血症の診断は?
成人の家族性高コレステロール血症の診断基準として
- 高LDL血症 LDL 180mg/dl以上
- アキレス腱肥厚
- 家族性高コレステロール血症あるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2等親以内)。早発生冠動脈疾患とは男性55歳未満、女性65歳未満で生じた狭心症もしくは心筋梗塞。
の3つの項目のうち2つを満たす場合に診断しています。アキレス腱肥厚はレントゲンやエコーで診断しています。ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症の診断において、遺伝子検査などは必須ではないとされています。
家族性高コレステロール血症の治療は?
家族性高コレステロール血症は動脈硬化、特に心筋梗塞が生じやすい病気です。動脈硬化を抑制するよう、健康的な食生活や運動習慣、禁煙が推奨されます。LDLコレステロールに関しては薬剤治療の適応です。スタチンという薬を継続します。スタチンでLDLが十分低下しない場合や心筋梗塞を生じてしまった場合などは、PCSK9阻害薬という薬の適応になることがあります。
家族性高コレステロール血症の方の家族はどうする?
ヘテロ接合体による家族性高コレステロールは、約50%の確率で子供に遺伝するとされています。一般的な健康診断を受けること、動脈硬化を促進させる生活習慣を避けることが大切です。具体的には健康的な食生活や運動を行い、喫煙を避けるようにしましょう。
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