心肥大を放っておくとどうなる?【循環器専門医が解説】
心肥大という言葉を聞いたことありますか?心臓の壁が厚くなった状態です。心肥大とはどういうことか?放っておくとどうなるか?もし心肥大と言われたらどうすればいいか解説していきます。
心肥大とは?
心臓は筋肉でできてます。心臓の筋肉が厚くなるのを心肥大と呼びます。身体の筋肉が大きくなるのは良いことですが、心臓に関しては心肥大は悪いことです。心肥大は不整脈や心不全の原因になります。
心肥大の原因は?
心肥大の主な原因は2つあります。高血圧と遺伝的な肥大型心筋症です。血圧は心臓の圧力です。血圧200の人は、血圧100の人と比べると心臓への負担が2倍大きいです。高血圧が一番多い心肥大の原因です。その他には肥大型心筋症という病気があります。遺伝子異常により心臓の筋肉が肥大してしまいます。またスポーツ心臓や睡眠時無呼吸症候群、糖尿病でも心肥大が生じます。
心肥大を放っておくと
では心肥大は放っておくとどうなるでしょうか?こちらは心不全の考え方です。現代では高血圧や糖尿病など生活習慣病の延長線上に心不全があると捉えられています。心不全は一部の人がかかる特別な病気ではありません。ここのstage Bというのが、心不全の症状は無いが心臓になんらかの異常が起きている状態です。心肥大はstageBにあたります。stage Cは呼吸が苦しくなったり足がむくんだりする、皆さんがイメージする心不全です。心肥大はその前段階です。
放っておくと進行することが多いです。高血圧で心肥大を生じている人は、そのままでいると心肥大が進行して心不全や不整脈を起こすリスクが高いです。
心肥大と言われたらどうすればいい?
では心肥大と言われたらどうすればいいでしょうか?まず心肥大の原因を探します。高血圧や糖尿病などが代表的な原因です。最近は睡眠時無呼吸症候群が心肥大の原因として注目されてます。睡眠時無呼吸症候群は夜に呼吸が止まってしまう病気です。夜に何回も低酸素状態になってしまうため、心臓に負担がかかって心肥大や心不全、不整脈などを起こす原因になります。心肥大の原因が見つかったらその治療を行い、通常だと年に1回ほど心エコーで経過をみていきます。稀に心肥大の原因が全く分からないことがあります。その場合は医療介入する必要が乏しいと思われますが早期の肥大型心筋症の可能性があり、一旦は年に1回ほど経過をみています。
心肥大の原因としてスポーツ心臓があります。ただ実際にスポーツ心臓が原因で心肥大を生じるのは多くはありません。強度が高い有酸素運動を長期に行なっていないとスポーツ心臓は起こりません。大会に出場するようなマラソン選手か水泳選手以外はスポーツ心臓になることは少ないです。心肥大を安易に「スポーツ心臓かも」と言われることがありますが、心肥大の別の原因を考えるようにしましょう。
まとめ
今回のまとめです。心不全は生活習慣病から連続的に移行する病態と捉えられています。心肥大は心不全のプロセスの1つです。例えば高血圧が原因で心不全になる場合、息切れや足のむくみが起きる数年前に「心臓が肥大しているけど症状が無い」という段階が一定期間あります。今の話が難しいと感じる方は、「心肥大は心不全の前兆」と覚えてもらえば大丈夫です。実際の日常診療では患者さんに「心肥大は進行すると心不全や不整脈を起こすことがあります」と説明してます。以上になります。ありがとうございました。