アルコールと不整脈の関係【循環器内科医による解説】
アルコールと不整脈の関係について解説したいと思います。
まずアルコールを摂取すると脈が早くなります。またアルコールは一部の不整脈を誘発します。この2つによってアルコールと不整脈は関連しています。
アルコールにより脈が早くなる
アルコールにより脈が早くなる理由としては、アルコールの代謝産物のアセトアルデヒドという物質が交感神経を活性化させるからです。交感神経が活性化すると脈拍数は上がります逆に血圧はアルコールにより血管が拡張することによって下がる と言われています。脈拍数が上昇する時間は、数時間から長い場合は24時間程度とされています。アルコールを大量に飲んだ場合や連日飲酒した場合は、最大で24時間程度脈拍数の上昇が持続します。
アルコールの代謝産物のアセトアルデヒドの処理能力には個人差があります。簡単に言うと、顔がすぐ赤くなる人はアセトアルデヒドの分解能力が低いです。そういった方は脈が早くなりやすい、また脈が早い状態が長く続きやすいです。
アルコールによって起きやすい不整脈
次にアルコールによって起きやすい不整脈についてです。一部の不整脈、例えば心房細動と期外収縮という2つの不整脈はアルコールを飲んだ後に起きやすいです。
「アルコールによって不整脈になる」
というわけではありません。元々心房細動を持っている方、期外収縮を持っている方が
「アルコールを飲むことによって元々の不整脈が起きやすくなる」
というのが正しい表現です。
ではよく聞かれる2つの質問に対して答えようと思います
1つ目「アルコールを飲むと動悸がするけどどうすればいい?」
アルコールを飲んだ後の動悸が、単にアルコールの代謝産物のアセトアルデヒドによって脈が早くなっているだけなのか、もしくはアルコールを飲むことによって心房細動などの異常な不整脈を起こしているのか、このどちらかというのが非常に大切です。脈が早くなっただけであれば特に治療は必要ないですし、異常な不整脈を起こしている場合は場合によっては治療が必要です。
最適な検査は24時間の心電図検査、Holter心電図という検査です。丸一日心電図のパッチを付けて過ごします。可能ならその際にアルコールを摂取して、動悸を自覚したときの心電図でどういった異常が出ているのかを調べます。それにより脈が早いだけなのか、異常な不整脈を起こしているのか が分かります。
2つ目「不整脈だけどアルコールを飲んでいい?」
まずアルコールを飲むと、ほとんどの不整脈は増えます。ただ仮に多少不整脈が増えたとしても、ほとんど体に害のない不整脈であれば心配はありません。ではアルコールに注意が必要な不整脈の方はどういう人かというと
- 不整脈や心臓病で入院したことがある方
- 現在の不整脈の薬を飲んでいる方
こういった方は、できれば主治医にしっかり確認してもらった方がいいと思います。私自身のスタンスとしては、
「不整脈によって心不全などを起こすリスクが高い方はアルコールを控えた方がいいと思うが、不整脈の大多数の方は特にアルコールを禁止する理由は無い」
と思います。不整脈と言われたことがある方の中でも
- 不整脈や心臓病で入院したことがある
- 不整脈の薬を今も飲んでいる
に当てはまらない方は特にアルコールを摂取するのは問題ないと思います。
注意点とまとめ
この解説の注意点として、今回はあくまで『不整脈だけ』の話です。肝臓の病気などで主治医に禁酒を勧められている方は、しっかり禁酒するようにしましょう。最後に
「適量のアルコールは心臓に良い」
と言われています。適量はどれぐらいかというと、ビールだったら350-500ml、ワインだと1-2杯 個人差があるので目安になるんですけど、これくらいの量が適量と一般的に言われています。休肝日を作ることも非常に大事です。毎日飲むというよりは、一日おきにアルコールを摂取するのが理想的です。
不整脈の問題の前に、アルコールを浴びるほど飲むというのはやはり健康上も社会的にも良くないことです。アルコールとの適切な関係を保ちましょう。
以上アルコールと不整脈の関係についてでした。
下のページで不整脈について解説しています。気になる方はぜひお読み下さい。