HDLコレステロールとLH比について
HDLコレステロールとは
HDLコレステロールとは血液中のコレステロールの一つです。動脈硬化を抑える作用があるとされており、以前は善玉コレステロールと呼ばれてたこともありました。最近はHDLが高すぎることも動脈硬化を生じる可能性が示されており、「善玉」と一概に表現してしまうことが正しいのか議論されています。
HDLコレステロールが低いときは
HDLが低い場合は脂質異常症に当てはまります。
脂質異常症の診断基準
LDLコレステロール |
140mg/dl以上 |
高LDL血症 |
120-139mg/dl | 境界域高LDL血症 | |
HDLコレステロール |
40mg/dl未満 |
低HDL血症 |
中性脂肪(トリグリセリド) |
150mg/dl以上 175mg/dl以上(非空腹時) |
高中性脂肪(トリグリセリド)血症 |
HDLコレステロールとLDLコレステロールは食事の影響を受けないとされています。HDLが低いことは動脈硬化のリスクとされています。運動不足や喫煙が影響しますが、体質的な影響も大きいです。HDLコレステロールのみが低い時にどういった治療を行った方がいいかというのはまだはっきりしていません。LDLコレステロールの値や糖尿病、動脈硬化の有無により、薬剤治療を行うかを決定しています。脂質異常症に当てはまる場合は下のページもご参照下さい。
HDLコレステロールが高いときは
日本人でHDLコレステロールが高い方の多くは、CTEP欠損という遺伝子の異常です。遺伝性があります。CTEP欠損のヘテロ接合体という軽症なタイプは日本で50人に1人です。CTEP欠損のホモ接合体という重症なタイプは日本で数万人に1人とされています。HDLが高いというほとんどの場合はCTEP欠損のヘテロ接合体の異常です。CTEP欠損のヘテロ接合体異常は、動脈硬化を良くすることも悪くすることもあまり無いようです。CTEP欠損のホモ接合体異常は、コレステロールの異常をきたすため動脈硬化を起こすことが多い可能性が示されています。極めて稀ですが、HDL 150mg/dl以上の時はCTEP欠損のホモ接合体異常の疑いが強いとされています。
CTEP欠損についてはあまりはっきりわかっていない事が多いです。「HDLは善玉コレステロール」という単純な表現は正確ではない可能性があります。現状ではHDL 40mg/dl以下もしくは150mg/dl以上といった明らかな異常値でない限りは、あまり気にする必要はありません。
LH比に意味があるのか?
LH比という言葉をご存知でしょうか?「悪玉コレステロールであるLDLと善玉コレステロールであるHDLの比率を計算し、薬を飲むかどうかの判断に活用する」という考え方です。概ねLDL/HDLが2.0を超えると動脈硬化が進行しやすいとされています。ただLH比には下に挙げるような問題点があります。
- HDL 40-150mg/dlの場合は、HDLが動脈硬化を防ぐ作用があるか不明である。
- 例えばHDL 50mg/dl, LDL 100mg/dlの場合は、LH比2.0となる。脂質異常症に当てはまらない人に対して無用な不安を与えてしまう。
また日本動脈硬化学会のホームページの「HDLコレステロールが高いと言われたら?」の文中には
LDLコレステロールやトリグリセライドが高値である場合に、HDLコレステロールが高ければ動脈硬化疾患発症のリスクをキャンセルできると考えるのは間違いです。
と記載されています。下のページは日本動脈硬化学会の「健康診断で異常を言われたら?」です。HDLコレステロールについて分かりやすく記載されています。
健康診断で異常を言われたら?
以上からLH比を根拠に薬の導入などを決定することは行っていません。