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「加齢によるもの忘れ」と「認知症」

[2021.12.15]

みなさんこんにちは。看護師の鈴木です。日頃、患者さんとお話していると、「最近ボケてきちゃって困る」「認知症になったんじゃないか」ということをよくお聞きします。もの忘れが増えてくると心配になってしまうと思いますが、加齢によるもの忘れと認知症のもの忘れは似ているようで少し違います。

加齢によるもの忘れ

脳は加齢とともに徐々に細胞が減少し、萎縮していきます。とくに、感情や理性を司る前頭葉や記憶を司る海馬がある側頭葉から萎縮をしていきますが、スピードはゆっくりで、全体的にバランスよく萎縮が進んでいきます。そのため、急激にもの忘れが進んでよくわからなくなるということはありません。「昔と比べて物の名前がすぐに出てこない」「新しいことをするのに時間がかかってしまう」というエピソードが多いです。これは、物事を理解して判断する処理のスピードが遅くなっているからです。ですので、少しヒントがあれば思い出せたり、今までよりもゆっくり行えばできることがほとんどです。今まで培ってきた経験や学習したことを生かして判断をしたり、行動する能力は、加齢に伴って低下することはないと言われています。


認知症の記憶障害

認知症でも同じように脳の萎縮や脳細胞が減少しますが、早いスピードで局所的に萎縮が進んでいくので、症状が進行していきます。加齢によるもの忘れは、脳の処理スピードの低下によるもの忘れが主でしたが、認知症のもの忘れ(特にアルツハイマー型認知症)は記憶を司る海馬がある側頭葉が障害を受けてしまうため、記憶をする機能自体が低下してしまいます。そのため、「夕食を食べたかどうかを忘れてしまう」など、エピソード全体を忘れてしまうことがあります。

 

「加齢によるもの忘れ」と「認知症の記憶障害」の違い

下の表にそれぞれの違いをまとめました。ポイントとしては、認知症による記憶障害は日常生活で支障がでているということです。

加齢による健忘

認知症

体験したことの一部を忘れる

・(自分でしまった覚えはあるけど)「通帳、どこだったかな」

・(食べたことは覚えているが)「あれ、お昼は何を食べたかな?」

体験したことのすべてを忘れる

・(自分でしまったことを忘れ)「通帳がない、どうしよう」        

・(食べたこと自体を忘れ)「誰もつくってくれないからたべてないよ」

加齢とともにゆっくり進行する

・昔に比べて芸能人の名前が出てこない

進行に伴い悪化する

・直前に言ったことを忘れて何度も同じことを言う

本人に自覚がある

・「最近ぼけたのかな…忘れっぽいよ」

本人に自覚がない

・「そんなはずはない、間違っていない」

生活上大きな問題にはならない 生活がしづらい、困る

 

おわりに

もの忘れがあると、自分自身も家族も不安になってしまいますよね
・もの忘れというのは、具体的にどんなもの忘れなのか
・どんなことに困っているのか
これを明らかにすると、加齢によるもの忘れか、認知症によるものかの違いがわかります。少しわかりにくいこともありますので、「もの忘れがあるから認知症だ」「もの忘れは歳だから医者に行っても仕方ない」そう思わずに、心配に思う場合は、ぜひ、ご相談ください。

 
 

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