睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは睡眠時に呼吸が停止することにより、症状や合併症をきたす病気です。成人の3-5%が睡眠時無呼吸症候群という推定もありますが、ほとんどの方は診断されていません。睡眠時無呼吸症候群は高血圧症や心不全などに大きく関与しています。特に日中眠気を自覚している場合、薬剤耐性高血圧症や心不全などをきたしている場合は診断治療する意義が大きいです。
心血管疾患における睡眠時無呼吸症候群の合併頻度
睡眠時無呼吸症候群は心疾患や高血圧に合併していることが多いです。下記の報告があります。
睡眠時無呼吸症候群の頻度 | 出典元 | |
全高血圧 | 30% |
Kales et al. Lancet 1984 |
薬剤耐性高血圧症 | 80% |
Logan eat al. J Hypertension 2001 |
心不全 | 76% | Oldenburg et al. Eur J HF 2007 |
心房細動 | 50% | Gami et al. N Engl J Med 2005 |
冠動脈疾患 | 31% | Schafer et al. Cardiology 1999 |
急性冠症候群 | 57% | Yumino et al. Am J Cardiol 2007 |
大動脈解離 | 37% | Sampol et al. Am J Respir Crit Care 2003 |
循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン より引用
循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群の大部分は閉塞性睡眠時無呼吸症候群と呼ばれるタイプです。原因は睡眠時に起きる喉の部分での狭窄です。喉で狭窄が生じる原因として一番主なものは肥満です。日本人を含むアジア人では、骨格的特徴(顔が長く、顎が小さい)から肥満が無くても睡眠時無呼吸症候群を生じることがあるとされています。日本における閉塞性睡眠時症候群の1/3〜1/4は非肥満とされています。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠時に無呼吸を生じます。同居者がいびきを発見し診断につながることが多いです。体への悪影響としては、①睡眠の質が低下する、②無呼吸による交感神経や血圧に対する影響 の2つがあります。
①睡眠の質の低下
睡眠の質が低下し、日中に眠気を感じることがあります。睡眠時無呼吸症候群の場合は、車の運転などで交通事故を起こす可能性が高いと言われています。過去には睡眠時無呼吸症候群を原因とした交通事故がニュースで取り上げられたこともあります。
②無呼吸による交感神経や血圧に対する影響
睡眠時無呼吸症候群は、高血圧症や不整脈、心不全の原因となります。無呼吸が起きた際に低酸素が生じ交感神経が活性化し、血圧が上昇します。通常は睡眠時は血圧が低値を示しますが、睡眠時無呼吸症候群の場合は逆に睡眠時に血圧が上昇することがあります。高血圧症や心不全のコントロールのために睡眠時無呼吸症候群の検査や治療を行うことがあります。
睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群の検査はいくつかあります。
①簡易睡眠ポリグラフィー
眠る時に機械を装着する検査です。より詳細に調べることができます。診断には必須な検査です。当院から手配し、自宅にキットを郵送致します。睡眠時1時間あたりの無呼吸、低呼吸の回数をAHIという数値で表現します。
AHI 5以下 | 睡眠時無呼吸症候群ではない |
AHI 5-20 | 軽度睡眠時無呼吸症候群 |
AHI 20-40 | ポリソムノグラフィーでCPAPの適応検討 |
AHI 40以上 | CPAPの適応 |
②ポリソムノグラフィー
入院で行う精密検査です。簡易睡眠ポリグラフィーでAHI20-40の際に、CPAPの適応を判断する時に行います。必要な時は可能な医療機関をご紹介します。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の原因は肥満が最多です。減量により睡眠時無呼吸症候群は改善します。飲酒や睡眠薬は睡眠時無呼吸症候群を悪化させます。
適応であれば、CPAP療法という治療法を行います。CPAPとは睡眠中にマスクを付け、肺に空気を送る機械です。適切に装着できれば、夜間の無呼吸を減少させることができます。CPAPは睡眠時無呼吸症候群の方の心血管病を減らすことができるとされています。
CPAPは違和感などで継続できない場合もあります。その際はマウスピースを用いて治療しています。その時は適切な歯科に紹介いたします。
最後に
当院では、主に心血管病の予防のために睡眠時無呼吸症候群の検査治療を行なっています。眠気がある方や肥満の方だけが睡眠時無呼吸症候群になるわけではありません。高血圧症や心不全の方を中心に、簡便なスクリーニング検査を行い適切な治療に結びつけていくようにしています。お困りの際は是非ご相談ください。