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BNPとは?高いと心不全?正常値・高齢者の目安と下げるには【循環器専門医】

[2024.12.09]

著者・監修:玄 哲樹(日本循環器学会 循環器専門医)/すみだブレインハートクリニック院長
初回公開:2024年12月9日/最終更新:2026年9月29日


BNPは、心臓に負担がかかると心臓(心室)から出てくるホルモンです。18.4 pg/mL以下なら心不全の可能性は極めて低く、35以上で心エコーなどの検査が勧められ、100以上は心不全の可能性が高いと考えます。

健康診断や通院先の血液検査で「BNPが高い」と言われ、初めてこの言葉を調べている方も多いと思います。BNPと、似た検査であるNT-proBNPは基準値が違います。当院ではNT-proBNPを測っています。健診や他院の結果票にどちらが書かれているかを確かめて、下の表に当てはめてみてください。

NT-proBNP(BNP) どういう状態か 次にすること
55以下(18.4以下) 心不全の可能性は極めて低い 特になし
55超〜125未満(18.4超〜35未満) 心不全の可能性は低い できれば経過観察
125〜300未満(35〜100未満) 前心不全、または心不全の可能性 心電図・胸部X線・心エコー
300〜900未満(100〜200未満) 心不全の可能性が高い 早めに原因を調べ、治療を始める
900以上(200以上) 入院が必要になりうる高リスクの心不全の可能性 速やかに原因を調べ、治療を始める

単位はpg/mL。日本心不全学会「ステートメント2023年改訂版」による目安です。数値が低い段階でも、息切れやむくみなどの症状があれば受診してください。

ただし、BNPは高齢・腎臓の働き・心房細動でも上がります。数字だけで「心不全」とは決まりません。この記事では、数値ごとの意味、心臓以外で上がる理由、高いと言われたあとに受ける検査、下げるためにできることを順に解説します。

この記事の内容は、動画でも解説しています。


1. BNPとは

BNPの正式名称は「脳性ナトリウム利尿ペプチド」です。「脳性」と付いていますが、最初に見つかったのが脳だったためで、実際には主に心臓の筋肉(心室)から分泌されます。

心臓の壁が引き伸ばされる(負担がかかる)と、心臓はBNPを出して、尿から塩分と水分を出させたり血管を広げたりして、自分の負担を軽くしようとします。心臓の負担が大きいほど血液中のBNPは多くなるので、BNPの値は「いま心臓にどれくらい負担がかかっているか」の目安になります。

診察室でどう使っているか

例えば、息が苦しくて来られた方の胸のレントゲンで、肺が白くなっているとします。この場合は肺炎か心不全が考えられ、どちらか判断に迷うことがあります。ここで血液検査のBNPを見て、上がっていれば心不全、低ければ心不全ではなさそうなので肺炎かな、と考えます。

最近はそれに加えて、心不全の治療がうまくいっているかの判定や、高血圧・糖尿病などの生活習慣病の方のリスク評価にも使われています。心不全の方に治療がうまく効くとBNPは下がるので、BNPを見ながら薬を調整することもあります。


2. BNPの正常値は?高いとどうなる?数値ごとの意味

冒頭の表は、日本心不全学会が2023年に改訂した目安です。

2023年の改訂で、循環器専門医に紹介する目安が「BNP 100以上」から「BNP 35以上(NT-proBNP 125以上)」に引き下げられました。症状が出る前の段階で見つけて治療につなげる、という考え方です。

BNP/NT-proBNPの数値の目安(日本心不全学会「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版」図2より引用)

「前心不全」とは

心臓に形や働きの異常(心臓の壁が厚い、心臓が大きい、弁膜症など)はあるけれど、息切れやむくみなどの症状はまだ出ていない段階のことです。症状がなくても、この段階で治療を始めると、症状の出る心不全に進むのを防げる可能性があります。

200を大きく超えていると言われたら

BNPが数百以上の場合は、心臓にかなりの負担がかかっている可能性があります。息苦しさやむくみがあれば、その日のうちに受診してください。症状がなくても、できるだけ早く循環器内科で心エコーを受けてください。


3. すぐに受診してほしいサイン

BNPの値にかかわらず、次のような症状があるときは早めに受診してください。

  • 階段や坂で、以前より息が切れる
  • 横になると息苦しく、枕を高くしないと眠れない
  • 足のすねを押すと、へこんだまま戻らない(むくみ)
  • 3日ほどで体重が2kg以上増えた

当院ではNT-proBNPを測り、心不全・息切れ外来で原因を調べています。


4. NT-proBNPとの違い

健康診断や病院によっては、BNPではなく「NT-proBNP」を測っています。当院もNT-proBNPです。

  • BNPとNT-proBNPは、同じもとの物質から同じ数だけ作られる兄弟のようなものです。どちらも心臓の負担を反映します
  • 数値の大きさが違うので、同じ物差しで比べてはいけません(冒頭の表のように基準値が別です)
  • NT-proBNPのほうが腎臓の働きの影響を強く受けます。腎臓の働きが落ちている方(とくにeGFRが30未満)では、心臓の負担以上に高めに出ます

「前回はBNPだったのに今回はNT-proBNP」という場合は、数字を直接比べずに、それぞれの基準で判断してください。


5. BNPが高くなる原因 ── 心臓の病気以外でも上がる

BNPが高くても、すぐに「心不全」とは決まりません。心臓の負担以外にも、次のようなことで値が変わります。

  • 年齢:高齢になると、心臓の病気がなくても一般に高めに出ます
  • 腎臓の働きの低下:BNPもNT-proBNPも上がります(NT-proBNPのほうが強く影響を受けます)
  • 心房細動などの不整脈:心房からも1割ほど分泌されるため、軽く上がります
  • 急な炎症:肺炎などで高くなることがあります
  • 一部の心不全・高血圧の薬(サクビトリルバルサルタン、商品名エンレスト):飲み始めて8〜10週ごろまでは、BNPが上がって見えます。この薬を飲んでいる方は、NT-proBNPで経過を見ることがあります

逆に、太っている方はBNPが低めに出ることが知られています。「BNPが低いから心臓は大丈夫」と言い切れない場合もあるので、症状があれば数値だけで安心しないことが大切です。

心臓の病気以外でもBNPは変わる|高い=すぐ心不全、とは限らない理由

高齢者(60代・70代)の正常値は? NT-proBNPが高いと言われた高齢の方へ

日本心不全学会の基準では、年代別の基準値は設けられていません。冒頭の表の目安は年齢を問わず同じです。

ただ、高齢の方は心臓の病気がなくても値が高めに出やすく、NT-proBNPは腎臓の働きが少し落ちるだけでも上がります。高齢の方でNT-proBNPが高いと言われたときは、腎臓の働き(eGFR)とあわせて見たうえで、心エコーで心臓そのものを確かめます。「年齢のせい」かどうかは、数値だけでは決められません。


6. BNPが高いと言われたら受ける検査

BNPはあくまで「心臓に負担がかかっているかもしれない」という入り口の検査です。原因がどこにあるか(心臓の筋肉なのか、弁なのか、不整脈なのか)は、BNPだけではわかりません。当院では、血液検査はNT-proBNPで測り、次の順に調べます。

  1. 問診と診察:息切れ・むくみ・体重の増え方・夜の息苦しさ、飲んでいる薬を確認します
  2. 心電図:心房細動などの不整脈、心臓の壁の厚さのヒントを見ます
  3. 胸部X線(レントゲン):心臓の大きさ、肺に水がたまっていないかを見ます
  4. 心エコー(心臓超音波検査):心臓の動き・壁の厚さ・弁の状態を直接見ます。原因を調べる検査の中心です
  5. 血液検査:腎臓の働き(eGFR)、貧血、甲状腺などを確認します
BNPが高いと言われたら|原因を突き止める中心は心エコー

7. BNPを下げるには

BNPを直接下げる薬やサプリメントはありません。BNPは心臓の負担の「結果」なので、下げるには負担の原因を減らすことになります。

  • 心不全がある場合:心不全の標準的な治療で、BNPは下がっていくことが多いです(上に書いたように、一部の薬では飲み始めに一時的に上がって見えます)
  • 血圧を下げる:高血圧は心臓の壁を厚くし、BNPを上げる大きな原因です
  • 塩分を控える:塩分をとりすぎると体に水がたまり、心臓の負担が増えます
  • 不整脈を治療する:心房細動で脈が速い状態が続くと心臓が疲れます
  • 禁煙・節酒・体重と運動の見直し
  • 弁膜症や狭心症があれば、その治療

大事なのは、数値だけを下げることが目的ではないという点です。

治療中の方:前回より上がったら

心不全の治療中の方は、その方にとっての「落ち着いているときの値」を把握しておきます。前回よりBNPが40%以上(NT-proBNPなら30%以上)上がったら、悪くなっているサインとして原因を探します。


8. 生活習慣病とBNP ── 症状が出る前に見つける

高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病は、心不全のリスクです。以前は、苦しくなって入院して初めて「心不全」と言われることが多かったのですが、それはあまり望ましい状況ではありません。現在は、症状が出る前の段階から評価し、必要なら治療するという考え方になっています。

心不全とそのリスクの進展ステージ(急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版より引用。2025年版ではステージAを「心不全リスク」、Bを「前心不全」と呼びます)

この図で見ると、高血圧症や脂質異常症で薬を飲んでいる方は、すでにステージA(心不全リスク)以上です。これまでに心不全と言われたことがなく、症状もなければ、ステージCやDではありません。ステージAなのかB(前心不全)なのかを見分けるためにBNPを測ります。

BNPが高く、心エコーで心臓の壁が厚くなっている(心肥大)場合は、そのままにしておくと症状のある心不全に移るリスクが高い状態です。当院では、ステージBの中でもCに近い方、例えばBNPが100くらいで、ある程度の心肥大がある方には、ステージCに準じた治療を考えます。

心不全は特別な病気ではなく、生活習慣病から続いていく病気として捉えられています。2025年に改訂された心不全診療ガイドラインでも、この「予防の段階から見る」考え方が続いています。


よくあるご質問

Q1. BNPが少し高いだけでも、病院に行ったほうがいいですか?
A. 35 pg/mL以上(NT-proBNPなら125以上)なら、一度は心電図と心エコーで心臓を調べることをおすすめします。18.4〜35未満なら、すぐに治療が必要な心不全の可能性は低いので、次の健診などで経過を見ます。ただし、息切れやむくみなどの症状があれば、値にかかわらず受診してください。

Q2. BNPが高いと言われたら、何科に行けばいいですか?
A. 循環器内科です。心エコーで心臓の動きや弁を調べられる医療機関を選んでください。健診の結果票やこれまでのBNPの値があれば持参してください。

Q3. 心エコーでは異常がないのに、BNPが高いと言われます。
A. 高齢の方、腎臓の働きが落ちている方、心房細動のある方では、心臓に大きな異常がなくても高めに出ることがあります。心エコーで異常がなければ、値の推移を定期的に見ていくのが基本です。急に上がったときや症状が出たときは、もう一度調べます。

Q4. 高齢なので高くても仕方ないと言われました。大丈夫でしょうか?
A. 高齢の方で高めに出やすいのは事実ですが、学会の基準に年代別の値はありません。一度は心エコーで心臓を見ておくと、「年齢のせい」なのか「治療が必要な変化」なのかがはっきりします。

Q5. 心不全の治療中です。前回よりBNPが上がりました。
A. 前回よりBNPが40%以上(NT-proBNPなら30%以上)上がったときは、悪くなっているサインのことがあります。体重の増え方・むくみ・息切れを確認し、主治医に相談してください。サクビトリルバルサルタンを飲み始めたばかりの方は、薬の影響で上がって見えることもあります。

Q6. BNPは食事や運動で下がりますか?
A. 高血圧や体に水がたまっていることが原因なら、減塩や血圧の管理で下がることがあります。ただしBNPは心臓の負担の結果なので、原因(高血圧・不整脈・弁膜症・心不全など)を調べて治療することがいちばんの近道です。


まとめ

  • BNPは心臓に負担がかかると出るホルモン。血液検査で測る
  • 18.4以下なら心不全の可能性は極めて低い。35以上で心エコーなどの精査、100以上は心不全の可能性が高い
  • NT-proBNPは基準値が別(55・125・300・900)。腎臓の影響を受けやすい。当院はNT-proBNPで測定
  • 年齢・腎臓・心房細動・炎症でも上がり、肥満では低めに出る。年代別の基準値はない
  • 原因を調べる中心は心エコー。BNPを下げるには、原因(高血圧・不整脈・心不全など)の治療
  • 心不全は生活習慣病から続く病気。症状が出る前に見つけて治療する時代

この記事は一般的な情報です。ご自身の値の意味は、症状や他の検査とあわせて主治医にご相談ください。


参考文献

  • 日本心不全学会「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版」(2023年10月)https://www.jhfs.or.jp/statement-guideline/statement20231017.html
  • 日本循環器学会/日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」(2025年3月)
  • 日本循環器学会/日本心不全学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」
  • Bozkurt B, et al. Universal definition and classification of heart failure. J Card Fail. 2021.
  • Myhre PL, et al. B-Type Natriuretic Peptide During Treatment With Sacubitril/Valsartan: The PARADIGM-HF Trial. J Am Coll Cardiol. 2019;73:1264-1272.

著者プロフィール

墨田区・錦糸町周辺にお住まいで「健診でBNPやNT-proBNPが高いと言われた」「心不全が心配」という方は、ぜひすみだブレインハートクリニック(錦糸町・押上・スカイツリー近く)へお気軽にご相談ください。循環器専門医が検査の結果を一緒に確認し、心エコーなどで原因を調べて、一人ひとりに合わせた治療と経過の見方を丁寧にご説明いたします。

著者:玄 哲樹(げん さとき) すみだブレインハートクリニック院長|資格:日本循環器学会 循環器専門医

YouTube「心臓病TV」
心臓病・高血圧・不整脈などの循環器疾患についての情報をわかりやすく発信するYouTubeチャンネル「心臓病TV」を運営。チャンネル登録者は1.7万人。墨田区・錦糸町エリアを中心に多くの患者さんに視聴されています。

Youtube「心臓病TV」

クリニック紹介
すみだブレインハートクリニックは、東京都墨田区錦糸町に位置する循環器内科・脳神経内科専門クリニックです。心臓病・高血圧・不整脈・脳卒中の予防と早期発見を重視し、丁寧な検査と説明を大切にしています。

すみだブレインハートクリニックHP

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