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心房細動のカテーテル治療を受けた方がいい?【循環器内科医による解説】

[2022.06.14]

 

「心房細動のカテーテル治療を受けた方がいい?」というテーマで解説していこうかと思います。

 

心房細動について

心房細動とは不整脈の一つで、脈がバラバラになってしまう不整脈です。心房細動は脳梗塞や心不全の原因になる、『悪性の不整脈』と考えてもらった方がいいと思います。悪性というのは「放置しておくとどんどん進行してしまう可能性がある」という意味です。そのため心房細動は、症状がなくてもしっかり検査、治療をする必要があります。

 

心房細動の治療について

では心房細動はどうやって治療するのでしょうか?心房細動の治療にはいくつか考え方があります。

  1. 脳梗塞の予防
  2. 心房細動によって脈が早くなるのを抑える
  3. 心房細動自体を抑える

この3つはこの中のどれか1つを選択するものではありません。3つ全て行う方もいらっしゃいます。逆にどれも必要ない方もいます。その方の状態によって、オーダーメイドに治療している というのが現状です。
脳梗塞の予防には血液サラサラの薬を使います。脈が早くなるのを抑えるためには、脈を抑える薬を使います。心房細動自体を抑える治療にカテーテル治療という選択肢があります。心房細動を抑えるための最も有効な治療がカテーテル治療です。

 

心房細動のカテーテル治療

心房細動のカテーテル治療をカテーテルアブレーションと呼んでいます。カテーテルというのは管です。


こういった形で血管に針を刺して、管を体の中に入れていきます。血管を通して心臓に管を入ます。不整脈の原因となっている心臓の場所に電気を流したり熱を加えたり、逆に冷凍することによって不整脈の治療を行います。病院に入院して行なう治療で、主には2−3泊程度だと思います。治療自体は3−4時間、全身麻酔で行うことがほとんどだと思います。ただ施設によっても違います。カテーテルアブレーションと一言で言っても電気を使うのか熱を使うのか、あとは同じ心房細動でもどこを治療するのか、というのがその方によっても異なります。詳細はご自身の担当の先生に聞いてもらうのが一番だと思います。

 

カテーテル治療のメリット

一番のメリットは、心房細動が起こらなくなる可能性が高いことです。薬よりもカテーテル治療の方が心房細動を抑える効果が高いです。

発作性心房細動(たまに心房細動が起きてしまう方)だと7−8割の方が数年にわたって心房細動が起こらなくなるとされています。持続性心房細動(心房細動がずっと続いてしまっている方)でも5−6割の方が心房細動が数年にわたり起こらなくなるとされています。
また世界的に一致した意見として、『心不全を合併した心房細動の方はカテーテル治療を行った方がいい』と言われています。カテーテル治療を行うと心不全も良くなるというのは、具体的には苦しくなることが減ったり心不全で入院することが減ったりという効果が見込めます。

 

カテーテル治療のデメリット

逆にカテーテル治療の一番のデメリットは合併症です。血管に針を刺して、管を心臓まで入れていく時に、どうしても心臓や血管を傷つけてしまう可能性があります。また使う薬のアレルギーなどを起こすことがあります。重篤なものは1%以下、非常に少ないんですが大切なことなので担当の先生からしっかり説明を受けて下さい。ご自身で納得をした上で受けるかどうか選択してもらった方がいいと思います。
ただ私自身の合併症についての考え方なんですが、心房細動のカテーテル治療は世界中で数多く行われてきています。そのため我々は合併症を多く経験してきて、カテーテルで使う道具も日々改良を続けています。合併症が起きた時の対処法も確立しています。本当にカテーテル治療をやったほうがいい人、我々から見て治療が必要な方が過剰に合併症を恐れて治療を受けないということが時折あります。しっかり担当の先生と話をして、しっかり理解してその上で判断することが大事です。『合併症のリスクがある』というと、全て受けないというのは、我々から見てちょっともったいないと感じることがあります。
一番のデメリットは合併症が起きることですが、他にデメリットとして考えられることとしては、心房細動がまた起きてしまうことがあります。カテーテル治療を受けたら絶対治るというわけではなくて、発作性心房細動の方でも2−3割の方がまた心房細動が起きてしまいます。そういったときはもう1回カテーテル治療を行うことがあります。2回、3回と治療を繰り返すことによって9割以上の方が心房細動を抑えられると言われています。「カテーテル治療を受けても心房細動がまた起きる可能性があり、そしてもう1回カテーテル治療を受けなければいけないかもしれない」というのは理解していただいた方がいいと思います。またカテーテル治療をすると『心房細動は治るから薬はもういらないでしょ?』と言われることもありますが、薬は基本的にカテーテル治療を行った後も継続 となると思います。ただ中止できる方もいます。中止できるのは『脳梗塞のリスクは極めて低くて心不全などもない方』です。自分は薬を中止できるかというのは、担当の先生に聞いてもらった方がいいと思います。

 

カテーテル治療を受けた方がいい人は

カテーテル治療を受けた方がいい人はメリットがデメリットを上回る人です。そういった方には『カテーテル治療という選択肢があってあなたはそれを受けた方がいいと思いますよ』と説明しています。
具体的には

  • 症状が強い方
  • 心不全を合併している方
  • 比較的若年の方(65歳を1つの目安に)

があげられます。心房細動のために動悸が起きて苦しくなって、例えば救急外来を受診したり、医療機関を予定外受診したり、そういったことが2回以上ある場合はカテーテル治療を確実に受けた方がいいと思います。

また心不全を合併している方もカテーテル治療を行なった方がいいです。心房細動は心不全の原因になりますし、心不全は心房細動の原因になります。心房細動を起こして心不全が悪くなって、心不全があるため心房細動がもっと悪くなるという悪循環を起こしてしまいます。それを防ぐために『心房細動をまずカテーテル治療する』というのが心不全を合併した心房細動の考え方です。
あとは比較的若年の方もカテーテル治療を行なった方がいいと思います。年齢で具体的な数値を書くのは少し抵抗がありますが、私自身は65歳未満というのを1つの目安にしています。心臓病は進行する病気です。

例えば血圧が高くて、血圧が高いから心臓に負担がかかって心房細動という不整脈を起こしてしまう。心房細動が長く続くことによって心臓にもっと負担がかかってしまって心不全を起こしてしまう。心不全を起こしてしまうと階段を登るのに息が上がったりして日常生活で症状が出たり入院してしまう。 といった具合に長年かけて進行する病気です。
そのため、例えば60歳の方は今後20−30年先のことを見据えて治療の選択肢を考えていく必要があります。心臓病の不安要素を一つでもなくすため、治療できるものは治療した方がいいのではないかと思います。そのため今後20−30年先のことも考える必要がある、60歳代以下の働いているような方、またはそれに準ずるような方に対しては、私自身はカテーテル治療を積極的に勧めています。

 

カテーテル治療を受けるかどうかの考え方

カテーテル治療を受けるかどうかは、年齢で決めるような問題ではありません。実際70歳で症状もなくて心不全でも何でもないような方で、上に書いてあるような話をしてカテーテル治療を希望される方はたくさんいらっしゃいます。65歳というのはガイドラインがあったりとかするわけでも全くない、単に私自身が日常診療で目安としているという数値です。
66歳だからダメとか
68歳だからダメとか
そんなことは全くないです。大事なのは考え方です。心房細動のカテーテル治療を受けるときに大事なことは

  • 心房細動のカテーテル治療に何を望むのか?
    心房細動のカテーテル治療に何を期待しているのか?

これに尽きると思います。動悸の症状を抑えたいのか、心不全で入院したことがありまた入院する可能性を減らしたいのか、今後将来的な心臓病や脳梗塞のリスクを少しでも下げたいのか カテーテル治療について正確に理解して、自分はなぜカテーテル治療をやるのかという明確な理由がある、かつその理由が医学的、社会的に妥当であればカテーテル治療を受けた方がいいと思います。

 

以上
心房細動のカテーテル治療を受けた方がいい?についてでした。

すみだブレインハートクリニックでは心房細動に対して外来を設立しています。よければご覧下さい。

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