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血管が固くなってしまう動脈硬化

血管が固くなってしまう動脈硬化とは

この動脈硬化は動脈の中膜が原因で起きます。動脈の中膜には元々柔らかい筋肉細胞が存在します。そのために血管が弾力性を持ち、血液を安定して臓器に送ることができます。血管に過剰な力が加わることや血管に関与するホルモンの異常で、中膜の筋肉細胞が障害されることがあります。そうすると、中膜にあった柔らかい筋肉は少しずつ消失し、硬い組織に置き換えられます。これが血管が固くなってしまうタイプの動脈硬化です。イメージしやすいものとして、ゴムのチューブを挙げることが多いです。最初は弾力性に富んで柔らかいですが、徐々に固く脆くなっていきます。

 

血管が固くなってしまう動脈硬化の原因

血管が固くなってしまう動脈硬化の原因は、①血管に過剰な力がかかることと②血管に関与するホルモンの異常です。血管にかかる力とは、血圧を指します。高血圧を放置していると徐々に血管が固くなるということがイメージできると思います。また血管が固くなると、拡張できなくなるため血圧が上がります。高血圧症はなんらかの治療をしないとこの悪循環に陥ります。血管に関与するホルモンというのはいくつかありますが、特に高血圧症、肥満、糖尿病、心不全の際にそういったホルモンが過剰になることが知られています。高血圧症、肥満、糖尿病、心不全の場合は血管が固くなる動脈硬化が進行しやすく、注意が必要です。

 

血管が固くなる動脈硬化の検査:PWVについて

日常診療で血管が固くなる動脈硬化の有無を調べる際は、PWV:脈波伝播速度という検査を用います。PWVは、両手足の血流を同時に測る検査です。足の方が心臓からの距離が長いため、足の血流は手より遅れて到着します。手足の血流の時間の差と手足の血管の長さを計算することによって、血流が流れる速度を求めることができます。血管が固くなるほど速度が速くなり、血管が柔らかいほど速度が遅くなるという法則があります。PWVについては世界的に決まった基準が定まっていません。当院では日本のガイドライン などを参考として、以下の基準を用いてます。

PWV  
1400cm/sec以下 血管弾性正常
1400-2000cm/sec 血管弾性低下
2000cm/sec以上

血管弾性高度低下

参考

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2013_yamashina_h.pdf

 

左右の値が算出されますので、低い値を正式な値として採用しています。この表に準じて血管の弾性を評価しています。足の動脈の血流が悪い場合などは正確な値となりませんので、その際はお伝えします。

 

血管が固くなると、、

血管が固くなると、血圧が上がり脳出血、心臓に負担がかかり心不全、脳の血流が低下し脳梗塞や認知症が起こりやすいとされています。むやみに動脈硬化を恐れたりリスクを無視したりするのではなく、現状を数値化し把握した上でどうするか考えることが大切です。

PWVは減量、禁煙、運動、高血圧治療、コレステロール治療、糖尿病治療により改善すると言われてます。特に高血圧治療においては重要であり、薬剤導入時や導入後のPWVを診療の補助としています。

 

血管年齢、という言葉について

PWVは血管年齢の検査とも呼ばれています。先進国では年齢と共にPWVが上昇していくことが知られています。日本における平均的な値と比較することにより、血管年齢を推測することができます。ただ全く血圧が上がらない民族が世界には存在し、そういった人々はPWVは年齢と共に上昇することはほとんどないと言われています。高齢になっても正常なPWVというのがもちろん理想です。ただ日本人の高齢者の多くはPWVは徐々に上昇します。その上昇を止めるためにどこまで追い求めるかはその方により異なります。「実年齢相応なら大丈夫」と仰る方や、「少しでも進行を抑えたい」と仰る方がいらっしゃいます。その方の人生観や下げることの医学的意義、リスクを考慮し、診療を行います。

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