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機能性胸痛

機能性とは器質性の反対語です。検査して分かるような異常がない胸痛を機能性胸痛と呼びます。機能性胸痛は頻度が高く、悩んでいる方も多い疾患です。機能性胸痛の前にまず痛みについて解説します。

 

痛みとは

痛みとは体のSOSです。体に何か異常が起きた時、人間は痛みとして認識します。痛みがあるから医療機関を受診し検査し病気が治療できます。機能性疼痛とはその痛みの原理を外れています。体に大きな異常がないにも関わらず、痛みが生じてしまいます。

機能性疼痛は身体で生じている誤情報です。機能性疼痛は慢性化し、増悪することが多い疾患です。機能性疼痛が繰り返し、または慢性的に生じ日常生活に支障が出ている場合は、機能性疼痛に向き合いしっかり診療する必要があります。痛みが生じているメカニズムを予測し、アプローチを考え治療を行います。著効する薬物が存在するとは限らず、疼痛を消失できることは多くありません。治療目標は疼痛に向き合い失われた日常生活の質を取り戻すことです。

 

機能性胸痛とは

機能性胸痛は他の胸痛の原因を除外できたが、胸痛が生じている場合に診断します。検査に現れないような心臓や胸膜におけるわずかな異常、内臓の神経系の異常、不安などの心因性の異常などが複合的に関与しているとされています。心臓神経症や心窩部痛症候群といった病気を当院では全て機能性胸痛と扱っています。

 

機能性胸痛の治療

胸痛の性状や時間、他の症状から痛みの機序を推測していくことから始まります。例えば

  • 心臓の期外収縮などの微小な異常を過敏に感知している
  • 胃や食道の神経が過敏になっている
  • 不安が関与している
  • 痛みに関与している神経回路に異常が生じている

など一つずつ仮説を立ててそれぞれに薬物治療を組み立てていきます。β遮断薬、カルシウム拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬、一般的な痛み止め、神経に作用する痛み止め、抗うつ薬、漢方などを組み合わせて使用しています。

 

最後に

機能性疼痛にいかに対処するかという点について、循環器領域は大きく遅れています。神経内科では慢性頭痛、消化器内科では機能性ディスペプシアという概念が取り上げられ学会ではガイドライン化が進んでいます。『心臓や肺に大きな異常が見つからなかった胸痛患者さん』は医学から取り残されており、悩みを抱えています。当院では他の分野での治療を応用し、機能性胸痛に取り組んでいきます。

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