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心不全

「心不全とは心臓が止まることである」

「心不全とは人間が死亡した時の診断名である」

「心不全とは心臓の病気の総称である」

「心不全になると運動をしてはいけない」

「歳を取ると心不全になるのはしょうがない」

このページを読んでいる方がこのように考えているなら、それは全て誤りです。心不全について正確な情報を社会に届けるために解説します。

 

心不全の定義

日本人の死因の第2位は心疾患であり、心疾患の中では心不全が最多です。日本には100万人の心不全の方が存在し、毎年8万人が心不全で命を落とします。今も心不全の方は増加し続けています。

心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。

これは学会が2017年に発表した正式な定義です。

http://www.j-circ.or.jp/five_year/teigi_qa.pdf

心不全について社会に理解を得るために、わかりやすい言葉で表現しています。当院でもこの表現に従い説明しています。心不全とは心臓が悪いことにより生じますが、まず心臓の正常な働きについて説明します。

 

正常な心臓の働き

心臓は体の血液のポンプの役割を果たしています。細胞は活動していくために酸素や栄養が必要です。血液に酸素や栄養が含まれています。心臓が血液を体に送り出し、体の各細胞に酸素と栄養が届けられています。心臓は常に一定のリズムで収縮しています。それにより血液の循環が生まれています。

 

「心不全」という状態

心不全とは、血液の循環がうまくいかなくなった状態を指します。循環がうまくいかないとは①血液がよどんでしまう、②血液が足りなくなってしまう の2種類があります。心不全の9割以上が①血液がよどんでしまうという状態です。

血液がよどんでしまうとは、洪水した川のイメージと近いと思います。水が溢れて川の外に氾濫してしまいます。

水が氾濫するまでは何ともありません。水が氾濫すると周囲の家に溢れた水が流れます。心不全の時も同様で、血液がよどむと血管の周囲に水がたまります。血管の外に水が溢れると症状を及ぼします。

体に水がたまる場合は、重力の影響でまずは足にたまります。足のむくみは心不全の重要なサインです。より多くの水がたまると、肺に水がたまってしまいます。肺は本来空気が入っており呼吸をする臓器です。本来空気があるべき肺に水がたまると、うまく呼吸ができなくなります。酸素を体に十分取り込むことができず、息が苦しいという症状が出現します。これを「肺に水が溜まる」と我々はよく表現しています。

息が苦しい症状は急に出現することがあります。川が一定の水域を越えると一気に氾濫するのと同様で、心不全も一定の段階から急に息が苦しくなることがあります。ただよく話を聞くと、何ヶ月も前から足のむくみがあったり動くと息が切れる症状があることが非常に多いです。前日まで何ともなかった人が急に心不全になることは極めて少ないと感じています。心不全はゆっくり時間をかけて進行します。早期に心不全のサインを見つけて治療することにより、息が苦しくなるまで進行することを防ぐことができます。

 

心不全の診断

心不全は、診察と心電図と胸部レントゲンでほとんどは診断できます。血液検査と心エコーを補助的に用いています。診断のためには①あふれ出た水分が足や肺に無いか検索する、②心不全をきたすような心臓の病気が無いか検索する という2つの視点が大切です。あらゆる心臓病が進行すると心不全をきたすとされていますが、一般的に良性と呼ばれる不整脈や軽度の弁膜症は心不全を起こすことはありません。

 

心不全の治療

心不全の治療は大きく2つに分かれます。①水があふれ出ないように薬を用いて循環を整える治療、②原因である心臓病の治療 の2つです。

①水があふれ出ないように薬を用いて循環を整える治療は、主に利尿剤と降圧剤を使います。利尿剤とは尿を出す薬であり、余分な水分を尿として体外に排出するため使います。高圧剤は血圧を下げる薬であり、心臓の負担を軽くするために使います。状況を見ながら薬を調整していきます。特に心不全で利尿剤を内服している場合は、原因の心臓病が解決しない限り利尿剤を中止すると高い確率で心不全症状が増悪します。

②原因である心臓病の治療は、まず心臓病を調べることから始まります。このために心エコーが特に重要です。心臓が形態的にどういった異常が起きているのか調べることにより、ある程度の推測が可能です。CTで狭心症や心筋梗塞の有無を検査する必要があることも多いです。それぞれの原因次第で全く治療が異なるので、その際は個別にご説明致します。

 

心不全と「付き合っていく」ということ

急性心不全と慢性心不全という言葉があります。息が苦しくなって救急車で病院に運ばれる場合は急性心不全と呼んでいます。心不全は完治するというより薬で症状を安定させる治療が主になってきます。そのため急性心不全を生じた方のほとんどは、今後長期間に渡り慢性心不全と付き合っていく必要があります。

心不全は社会の理解が不十分であり、不適切な対応を受けていることがあります。例えば「心不全だから」という理由でデイサービスから拒否されたり、本人の意向は無視して施設に入所させられたりことがあります。心不全は安定していれば運動や仕事も十分可能です。そのためにはもちろん定期的な通院や内服は必要になります。そして一定の生活指導(塩分制限や禁煙、規則的な生活など)も必要です。

 

心不全看護外来

心不全になってしまった方は、心不全と付き合って今後の人生を送っていかなければいけません。心不全は他の疾患と異なり、生活に大きな支障をもたらす疾患です。薬を飲む必要があり、再入院が非常に多いです。すみだブレインハートクリニックは、心不全を生じた方が心不全と共に生きていくサポートをしていきます。十分な時間をとって心不全の知識の共有と対話を行う必要があるため、心不全看護外来を開いています。他院通院中の方も受け入れています。下のページで解説していますのでご参照下さい。

心不全看護外来

 

最後に

心不全は徐々に増えている病気であり、高齢化社会に伴い今後も増えていくとされています。その一方、大病院以外では正確に診断治療されていることが少ないです。心不全かもしれないという説明を何十年も受けている方もいらっしゃいます。このままでは心不全の方は病院に運ばれるまで適切な診断や治療を受けられない世の中になってしまうのでは無いかと危惧しています。そのためにすみだブレインハートクリニックでは、病院に運ばれる前の段階で正確に診断治療できるよう力を入れています。当院では心不全の有無や原因となる心臓病名、治療法について分かりやすく説明するようにし、緊急性が高いと判断した場合は病院への搬送を手配しています。ぜひお困りの際は当院へお越し下さい。

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