動脈硬化
動脈硬化という言葉を聞いたことがあると思いますが、漠然な不安を抱えている人がほとんどだと思います。動脈硬化とは画像化、数値化できる生体現象です。動脈硬化について解説いたします。
動脈の構造
動脈とは心臓から体に向かって血液が流れている血管です。対して静脈は体から心臓に向かって血液が流れている血管です。血圧というのは動脈の圧力を指します。血液検査を行う肘の血管は静脈です。血液は心臓が収縮することにより動脈を流れ臓器に押し込まれます。動脈には心臓の収縮の圧力がかかります。そのため、圧力がかかっても簡単に破れないよう動脈は筋肉の壁を持っています。それに対して静脈の壁は薄いです。動脈は内膜、中膜、外膜の3層構造です。この中で内膜と中膜の2つが動脈硬化に関わります。
動脈硬化
動脈硬化は2種類あります。①arteriosclerosis(血管が固くなってしまう動脈硬化)と②atherosclerosis(血管が狭くなってしまう動脈硬化)の2種類です。arteriosclerosisは動脈硬化、atherosclerosisはアテローム性動脈硬化と訳します。この2つは英語でも非常に似ておりアメリカでも混同されているようです。世界的に有名な医療機関であるMayo clinicのホームページにもarteriosclerosisと atherosclerosisは違うという記載内容が書かれています。
①arteriosclerosis 血管が固くなってしまう動脈硬化
動脈硬化の1つ目は血管が固くなってしまう動脈硬化です。高血圧症や心不全、脳梗塞、脳出血と密着に関連しています。血管の固さは計測し数値化することが可能であり、固くなった際の対処法も示されています。下のページで解説します。
主にPWVという検査で血管の固さを数値化しています。
PWV | |
1400cm/sec以下 | 血管弾性正常 |
1400-2000cm/sec | 血管弾性低下 |
2000cm/sec以上 |
血管弾性高度低下 |
数値によって血管の固さを定義しています。
②atherosclerosis 血管が狭くなってしまう動脈硬化
動脈硬化の2つ目は血管が狭くなってしまう動脈硬化です。心筋梗塞が特に関連しています。効果のある薬剤も確立しており、この動脈硬化を早期に発見治療することが大事です。下のページで解説します。
主に頸動脈エコーという検査で血管の内膜の厚さを計測し、プラークを検出しています。
頸動脈エコー | |
IMT正常 プラークなし |
血管が狭くなる動脈硬化の所見なし |
IMT肥厚 プラークなし |
内膜が厚くなっているが、動脈硬化病変はなし |
プラークあり | 動脈硬化病変あり |
と定義しています。
2つの動脈硬化の評価
動脈硬化とは①血管が固くなってしまう動脈硬化、②血管が狭くなってしまう動脈硬化という2つに分かれます。それぞれ代表的な検査で数値化することができます。また動脈硬化の因子として一般的に知られているものがあり、治療可能な因子を示します。
動脈硬化の有無
IMT正常 プラークなし |
IMT肥厚 プラークなし |
プラークあり | |
PWV1400以下 血管弾性正常 |
動脈硬化の所見なし | 血管が狭くなってしまう動脈硬化 | 血管が狭くなってしまう動脈硬化 |
PWV1400-2000 血管弾性低下 |
血管が固くなってしまう動脈硬化 | 血管が固くなって狭くなってしまう動脈硬化 | 血管が固くなって狭くなってしまう動脈硬化 |
PWV2000以上 血管弾性高度低下 |
血管が固くなってしまう動脈硬化 | 血管が固くなって狭くなってしまう動脈硬化 | 血管が固くなって狭くなってしまう動脈硬化 |
動脈硬化因子
高血圧症 | 有 or 無 |
脂質異常症 | 有 or 無 |
糖尿病 | 有 or 無 |
肥満 | 有 or 無 |
喫煙 | 有 or 無 |
以上の分類が可能になります。それぞれに有用な治療法も確立しています。当院では生活習慣病の方を中心にこの分類を行なっています。
最後に
動脈硬化は「実体の無い恐怖」のように思われている方がいらっしゃいます。動脈硬化は科学的に解明されている(まだ完全には解明できていませんが)生体現象です。検査法も予防法も確立しています。当院では正確な評価と情報共有を心がけております。ぜひ何かありましたら当院へご相談下さい。